二食目 ーー 作る? 作るべきなのか? ーー (1)
新たな挑戦である。
朝が早い。
それが問題なんだけど、もう文句を言っていられない。
二食目
1
次の日の朝。
普段よりも早く起き、部屋を出ていた。
朝日も昇り始めたのだろう。同じように起きるのは、数日前ならば予想にもしていなかった。
だからなのか、普段よりも頭痛は酷く、目蓋も重いせいか、一度の瞬きがどうしても強くなってしまった。
ワザとらしく大きなアクビをし、無理矢理眠気をごまかしておいた。
このまま踵を返してベッドにダイブしたいのを堪え、ふらつく体を向かわせたのはキッチンであった。
半ば敗北感もあったのだが、自分で弁当を作ってみようと思ったのである。
やはりずっとコンビニ、というのも限界がある気がしてしまうので。
眠気からの気だるさの影響を考えると、そっちの方がよかったかも、と後悔に包まれてしまう。
キッチン、シンクの前に立つと、一度頬をバシッと叩いた。目を覚ますために。
「さて…… まずはご飯だな……」
果たして、一般の家庭において、朝一番にキッチンに立つのは誰なんだろう、と疑問を浮かべながらも、まずは炊飯器を開いた。
フウッと溜め息がこぼれた。お釜のなかは綺麗に何も入っていない。
何度か頷き、米みつへと足を進める。
もちろん、昨日見ていた立派な弁当を作れるなんて思っていないし、作ろうともしていない。
けど、ご飯は必要なので。
「まぁ、そんなに多くは炊かないからすぐ終わるよな」
シンクでボールに入れたお米を研ぎながら、ふとどんなものにするか考えてみた。
準備の終えたお米を炊飯器に入れ、ボタンを押した。あとは炊けるのを待つだけ。
あとは……。
すぐに冷蔵庫を開けてみる。
卵に牛乳、ハムやウインナー、野菜としてはトマトにキャベツにレタスと、いろいろとおかずになる食材はある。
でも。
「……全部違うよな」
冷蔵庫を閉めた。
ご飯が炊けた音が炊飯器からしたのは少し前。もう蒸し時間も充分である。
不思議と待っている間も楽しかった。
そのときである。
「あれ、あんた今日は早いのね?」
奥から声をかけてきたのは母親であった。朝ご飯の準備をする時間になったらしい。
「弁当、作ろうと思って」
「今から? 学校間に合うの?」
もう七時を回ろうとしている。やはり時間としては遅いらしく、母親は呆れていた。
だったら作ってくれ、という願いは押し殺し、作業に戻った。
「別にいいんだよ。おかずは作らないんだから」
「おかずを作らないって、何それ?」
エプロンをかけながら、首を傾げる母親。不思議そうに僕を見ているが、それを無視して、必要なものをキッチンに並べた。
「おにぎりにする」
唖然とする母親に、僕は強く言い放った。
断言していい。
昨日ネットで見ていたような華やかな弁当なんて作れるわけがない。
でま、おにぎりだけなら、と思えた。
何しろ、おかずも含めてだと、もっと早く起きなければいけない。それは無理である。
まぁ、今日は初日である。オーソドックスなものでいいだろう。うん。
それに、そろそろみんな起きてくる。それまでには終わらせておこう。
これは初戦である。
そこまで深く考えなくていいだろう。




