表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/29

襲撃⑴

短くてすみません…… 今日の夜にもう1話上げます。

 イーレン魔術学校の校門の前に、一人の男が立っていた。


 短く刈った茶色の髪に、肉食獣を思わせる獰猛な黒色の瞳。だが、何より特徴的なのはその背丈だろう。身長は2メートルに届こうかといったところで、その巨躯は決して貧相ではない彼の体を細長く見せていた。


「これが学校かあ」


 男が歩みを進める。


 男が校門をくぐると、横の小屋から男を呼び止める声が発せられた。


「えー、どちらさんで?」


 応対用にくりぬかれた窓から中年の男が顔を出す。この学校の来客の出入りを管理する人物だと察せられた。


「ん~?」


 背の高い男が小屋の中を覗き込む。中には中年の男のほかに二人いる。二人は武装しているが、カードに興じていた。二人はちらりと背の高い男に目を向けた後、またすぐカードに目を戻した。防備のために兵士が配置されているのだろうが、実際に脅威が来るとは思っていないのだろう。緊張感のかけらも感じられなかった。


「ははっ」


 男が兵士の緊張感のなさを笑う。目の前に敵がいるのに、のんきに遊んでいるのがおかしくてたまらないといった風に。


 男が突然笑い出したのを見て、中年の男は眉をひそめた。


「なんだ、あんたは。今日は客が来る予定はないよ。関係のない奴はさっさと出て行ってくれ」


「のんきだな。まあそれもしょうがねえか」


 男の周囲で魔素が活性化する。兵士の二人がそれに気づき武器を手に取ろうとした時にはすでに、小屋の中の3人は()()()にされていた。


 男は物足りなさそうな顔をしていた。


「本当はもっと時間をかけていたぶりたいところだが、そんな時間はないもんなあ。これからいくらでも殺せるから、我慢だ我慢」


 固まった3人が微動だにしないのを確認し、男は悠然と歩みを再開した。大規模な魔術行使の準備を進めながら、ゆっくりと校舎に近づいていく。


 ほどなくして魔術は完成し、魔素によって物質が形作られていった。


 現れたのは、巨大な氷塊。それが、()()宙に浮かんでいる。


「景気よく派手にぶちかまそうか」


 家一軒ほどもあるそれらが、複数ある校舎のそれぞれに向かって放たれた。


 大質量が校舎に激突する。轟音が鳴り響き、校舎が氷塊によって掘削される。氷塊が魔素になって消えると、そこには校舎にぽっかりと空いた穴が残されていた。倒壊こそは免れたものの、校舎は甚大な被害を受けている。


 男は首をかしげた。


「あ? 崩れ落ちると思ったんだが、威力の調整をミスったか。それとも思ったより校舎が頑丈なのか?」


 男は少しの間考え込んでいたが、どうでもいいという風に頭を振って、こうつぶやいた。


「まあいい。即死じゃつまらねえからな? たっぷり恐怖を感じて、絶望のうちに死んでいけ」


 再びの魔術行使。前のには劣るものの、それでも十分巨大な氷の槍が生成される。


 一方、激突音を合図として近くで潜伏していた3体の特異種(キメラ)が動き出し、学校に向かって進撃を開始した。

 

2020/10/11 キメラの数を2体から3体に修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ