来た見た飛んだ
昼と夜、過去と今、私達の半径二メートル程度は過去のアンティゴアで、その日は占領されたばかりでありながらのどかな風景が広がっているようでもあった。
もう少しで実る麦の穂が風に揺れる。
雲雀が鳴く声が私達を包んでいる。
そして私の意識は過去の王城の制御室へ。
ギルドや他国で見覚えのある今よりも若かりし男達が、アンティゴアの地下となる制御室で笑いさざめきながら制御盤を弄って喜んでいた。
「生贄が消えたのに光っているって事は、使えるのかな。」
「使えるのかもしれませんね。あの間抜けなアンティゴア人が気付かなかっただけで。ハハハ。私達が門を壊しただけで無抵抗ですからね。」
「無抵抗だったら処刑されないで済むなんて、はは、そんな訳無いじゃないか。動かない的に矢を射るのは楽しかったねぇ。」
ああ!こいつらは!
「こら、過去の映像よ。心を乱さないで。あなたが集中するのはこの馬鹿どもの指先よ。ボタンを押したら水の移動、わかったわね。」
「イエッサーマム。」
「ちなみに、処刑話を喜んでした阿呆はもうこの世にいないわよ。全身を矢で射抜かれていたそうよ。無抵抗なまま寝室でね。」
私は静かに集中することにした。
失敗したら怖いどころじゃない。
冗談じゃなく、逃げ時を間違えたら私達はここで死ぬのだ。
ゆびさき、ゆびさき。
男達は何かのボタンがアンティゴア内を検索できるカメラになると気が付いて大騒ぎをし始め、先程よりも騒めき喜んで色々弄び、ここぞという画像を彼らは見つけた。
「最高だ。」
男の一人が感嘆した。
私も驚いた。
彼らの眺める四角い画面に私とハルメニアが映り込んでいるのだ。
「いい女だ。こいつらが欲しい。」
え、私達が攻撃目標?
ボタンは押され、私は水を移動できる大魔法の大魔法陣をアンティゴアの大地に張り巡らし、そして急に思いついた事をもしていた。
それが私達を助けた。
古代兵器戦で古代兵器の光線をはじいた鏡を私達の盾にしたのだ。
私達を狙った光線は鏡に弾かれてアンティゴアの城壁を襲い、現在の壊れっぷりの理由を私に知らしめた。
そして、私達が受けたアンティゴアの城壁の攻撃力は余波だけでもすさまじく、私達は元の世界に戻って来てもその衝撃波で空中に飛ばされた。
水はどうしたか心配する事などできるどころか、私は枯草の上に落ちて気を失うことしかできなかった。




