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君に三食昼寝付きを差し上げます!  作者: 蔵前
彼の故郷であり私の原点であり原罪の地
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アルデア大陸と国々の位置関係

 アルデア大陸の西側にはキュナブラ(ゆりかご)と呼ばれる内海があり、多くの国々はキュナブラにしがみ付くようにして街を作り国家を成している。


 その理由はアルデア大陸の外海と面した海岸線が総じて崖となっているからだ。


 人が大陸を飛び出す事を遮るかのように海岸線が海蝕崖と呼ばれるような絶壁の状態にはなっているのは、元々もう少し大きかった大陸が天変地異で裂けて崩れたからとも言われている。

 ジークのエルドラドが滅んだ時のように、一夜にして世界に亀裂が走って粉々になったのかもしれない。

 あるいはその時にエルドラドこそ沈んでしまったのか。


 さて、そんなアルデア大陸の西側を地図にして描いてみると、私には大陸の西側が口を開けたカミツキガメの横顔のようにしかみえず、いつも口の部分となる内海がキュナブラという名であることがおかしく思える。

 だが、この内海があるからこそ人々は船を海に漕ぎ出せる事が出来るのであり、内海からの恩恵を受けることで命を繋げていられる国々も多いのだから命のゆりかごで良いのかもしれない。


 そして、ジークの国であるバルモアは、カミツキガメの口角部分にバルキアとバルセイユと並んで建国されており、これら三国が古代都市の上に国を建てたという共通項どころか、バルフィエナという名の女神の娘三人が守護神となっているという伝説もあることから、バル三国あるいはバル姉妹国とも呼ばれている。


 ノーマンのアンティゴアはカミツキガメの上唇となる口先だ。


 そしてこの部分は外海にも簡単に漕ぎだせるどころか、人為的に内海に封をして他国に干渉できるという事が出来る。


 つまり、アンティゴアは貿易どころか通行料のようなものを他国からせしめる事が出来るという、それだけで富を築ける国だったのだ。


 さらに、アルデア大陸の西側を分断するサーペンス山脈が隣国ローエングリンとアンティゴアとの国境線ともなっており、山脈から生み出される清流がノイエ川となってアンティゴアの地に流れ込むために、アンティゴアの平野は大穀倉地帯でもあったそうなのだ。

 要石を失った今は山脈からの清流が途絶え、海から吹き込む風で塩害も起きている事で食物が育ちづらい環境となっている。


 ちなみにサーペンス山脈はカミツキガメの髭のようにして西から東へと伸びているのだが、イーサンの魔城はカミツキガメの目玉ぐらいの位置、サーペンス山脈のローエングリン国の国境を接する一番険しい所に存在している。


「船の旅は初めてですわ!ああ、なんて海風は気持ちが良いのですの!」

「甲板を走ると危ないよ!ドーラ!」


 六歳の美少女が私の目の前を横切り、その後ろを十三歳の婚約者も慌てた様にして追いかけて私の目の前を横切って行った。

 異界で三年成長してしまった娘は自立心が旺盛なのか、私とノーマンの旅路に絶対についていくとジークに言い張ったのだ。


「ベイルの国ならばわたくしの国ですわ。ええ、わたくしならば要石に頼らずとも古代知識をもとに国の復興の手助けも出来ると思いますの。」


 美しすぎる六歳児は父親を黙らせるほどの素晴らしい笑顔で自分の主張を貫き、子離れが出来ないのにフィランドゥによって混乱させられた国から出る事が出来ないジークは苦虫を噛み潰した顔でアランドゥーラの言い分を受けいれた。


 さらに、大事な娘の為に船まで出したのだ。

 私達が乗り込んだこの船にアランドゥ―ラ姫の為の護衛官も乗り込んでもいるが、船倉にはアンティゴア向けの食糧などの寄贈品まで納まっている。

 名目は国難の危機に手を貸してくれたアンティゴア王へのバルモア国からの感謝の印であり、真実はアンティゴアという荒地でアランドゥーラがご飯が食べられなかったら大変だという過保護すぎる親心だ。


「海風は風邪をひくよ。それに、塩を含んでいるから肌も荒れてしまう。」


 ベイルはアランドーラに薄絹のローブを着せ付け始めた。

 彼は自分が今まで子ども扱いされていた鬱憤を、彼の幼い婚約者に対して兄ぶることで昇華させているのだろうか。

 いつもだったらリジーと纏わりつくベイルが自分に一切近寄らずに、なんとアランドゥーラしか構わないという事象に、私は好ましいどころか少々妬ましいとも思っていた。


 私とノーマンは離れ離れなのだ。


 ノーマンは魔城からアンティゴアを目指すという道のりである。

 これもジークが決めたことだ。


「君達のお馬さんは魔城なんでしょう。お馬さんをどうするの。ちゃんと連れて帰んなさいよ。大丈夫、エレとベイル君とうちのちびこは君達がお家に帰った頃にアンティゴアに辿り着くように船旅にするから。」


 ノーマンはジークに対して殺気の籠った目線を返し、だが、ディーナはジークの案に大賛成をした。

 私がノーマンに流されて判断を誤ったら、互いを憎み合うか互いへの罪悪感で本当の幸せを手にできないかもしれないからとディーナは言ったのだ。


「私が大好きなティアにはいつも最高な状態でいて欲しいのよ。」


 私はディーナに感動し、そして、離れ離れでもノーマンへの思慕は覆されはしないとジークとディーナの甘言に乗ってしまった。


 そう、甘言だったのだ。


 ジークは一日どころか一分一秒でも多くアランドゥ―ラ姫といられるように。

 そしてディーナはと考えながら、私は微笑ましいベイルとアランドゥ―ラ姫から視線をそらして自分の隣にはりつくようにして立つ男性を見返した。

 彼は私と目が合ったと嬉しそうに片目をつぶって見せた。


「うふ、可愛いおチビちゃん達ね。ドーラちゃんのお陰でこんな素敵な船旅、ええ、あなたと、ああ、たった一日半ですけど、出来てうれしいわ。」


 私は私の両肩に両手を乗せてもっとくっついて来たディーナに溜息をついた。

 ノーマンはディーナの馬の面倒も見ながら、サーペント山脈を越えてアンティゴアに向かう旅をたった一人ぼっちでしている。

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