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いざ異界へ

 私達捜索隊はアランドゥーラ姫の送られた異界へとテレポートした。

 此の世でなくとも向かう先が固定できれば移動できるのだと、移動魔法を唱えた自分でありながら驚いてもいたが、私の魔法は正確にアランドゥーラ姫の住まう異界へと辿り着いていた。


「この世界での一日が元の世界の一日と同じか違うかもわからない。まずは一時間だけ捜索して元の世界に戻りましょう。」


「では、すぐに捜索だ。一時間で見つけられれば二度三度の来訪は無いからな。」


 ノーマンはジークと目線を合わせて、なんと二人だけですぐにでもジャングルに入り込んでしまった。

 私は彼等を追いかけようとして、ディーナに肩を引っ張られた。


「最初の一時間はあの二人だけで動いて貰う。あの二人にこの世界の危険性を図ってもらうのよ。」


 私はディーナに頷くと、最初の一時間だけはと置いてきたジークの妻子の事を考えた。

 フィレーナには本格的に捜索する前の事前探索だと言ってある。

 それは事実でもあるが、私が移動したポイントはアランドゥーラ姫の生息地域に重なるように、だ。

 この一時間以内にジークとノーマンがアランドゥーラ姫にインカミングする可能性はかなり高く、ジークが決断をする時間もあと少しともいえる。


 ジークは妻子をこの世界に連れてくるつもりはない。


 一時間で見つからなければ、次は二時間のチャレンジだと言い張って彼等を置いてくるだろう。


「ああ、お前ら!どこから来た!ここから出ることができるのか!」


 ざわっと大きな緑色の葉をかき分けて現れた男はかなり髭塗れなうえに、衣服は何かと戦った後のようにかぎ裂きされている。

 もちろん破れた衣服から見える肌にもかぎ裂きの跡が見えた。

 そして、私はこの男になんとなく見覚えがあった。


「あら、あなたはどちら様?ふふ、子供好きのノッド・レイリー元隊長様によく似ておりますけれどね。」


 ディーナの言葉に私は以前にハルメニアに見せられた夢を思い出していた。

 子供好きの変態。


「あなたがあの子を誘拐したの!」


「ティアは下がって。尋問はいつでもできる。切り刻んだ方が口が軽くなるものよ。私に任せて頂戴。」


 ディーナは私を男から遠ざける様にして後ろに下げると、彼こそ細身の剣を抜いてぼろ雑巾状態の男に対峙した。

 レイリーはディーナの出で立ちに厭らしく笑うと、彼も自分の腰に下げていた長剣を鞘から引き出した。


 彼等の刃が打ち合う音がジャングルに響いた。


「ベイル!リジーは頼んだわよ!」

「はい。ディーナさん。」


 すっとベイルも剣を抜き、しかし、ベイルは剣を持つ手をぐんっと上に向けた。


「あうっ。引っ張られる!」


 私は真空の空間をベイルの周囲に卵の殻のようにして張り巡らし、彼がかけられた魔法糸の拘束から彼を解き放った。


「あ、動ける!今のは!」


「我らが瞳は真実しかうつさず我らが瞳はまやかしをうつさず。」


「リジー?って、痛い!」


 私の簡易呪文が終わるやベイルは剣を持たない左手で両目を抑え、そしてゆっくりと手を目元から外すと、自分の頭上を見上げて口角をあげた。


「ありがとう、リジー。敵の姿を補足できました。」


 その横顔がノーマンにそっくりだと思いながら、私は枝の上で溶けた蝋のような姿をした魔女を睨みつけた。

 真っ黒なローブを羽織ってはいても、真っ黒な高価なドレスを纏ってはいても、彼女の真っ白で弛んだ肉体は隠す事も出来ない程なのだ。

 この真っ白くその気になれば肉体をいくらでも変化できる彼女の名は、おそらくどころかアイシュ・アイアで間違いは無いだろう。


 私は彼女の事はほとんど知らないが、ギルドの登録によると暗殺に特化した魔女であり、彼女は今までにも数多くの要人を殺してきている。

 彼女が殺しに来たのは私か、それともフォルモーサスの賞金首のノーマンか。

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