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君に三食昼寝付きを差し上げます!  作者: 蔵前
彼は王の旗を背負うもの
33/106

私達は運命共同体

 地下拷問室から逃げ出した彼等は、一目散に階段を駆け上がってきた。

 私はアシッドとドゥーシャの姿を見たことで、彼等の馬も拷問館の一階に呼び寄せておいた。

 また、階上の兵士達の到来を防ぐために茨と炎で階段を封鎖したので、一階に降りられないと階上にいた兵士達は次々と二階のバルコニーから外へ逃げている。

 安全地帯になった一階エントランスに集合した彼等は、自分の馬が自分達を気楽に待っていたことに対して、私が来ている事を知っているのに驚いた顔をそれなりに浮かべもしたが、すぐに各々自分の馬に乗り込んだ。

 あとは、彼等が走って私の元へと戻って来る為に、私が安全地帯になるように塞いでいた茨の蓋を開けるだけだ。


「さあ、開いたらすぐに飛び出すのよ!」


「もちろんよ!すぐにあなたの元にはせ参じますとも!」


 ディーナの声を合図に彼等は次々と外へと踊り出し、外に兵士が構えていようとものともせずに茨で作った私の安全地帯へと駆け込んできた。


         ――――――


 そうして、私の作った隠れ家にこうして集まっているのだが、私の目の前のノーマンはこれまでの全てを台無しにする勢いだ。


「もう少し、ねえ、その怪我が治るまで待てないの?」


 ノーマンは腫れて太ったトカゲか蛙のようになったご面相を私に真っ直ぐに向けて、瞳はいつものように美しい虹色だが、とても静かに私を見つめてきた。


「頼む。行かせてくれ。あの石が俺には必要なんだ。」


「あれを手に入れたとしても、あなた、黒の石、北を司る石が無ければ中央の黄色の力を抑え込めないわよ。」


 ノーマンは見るからにぐっとなって言葉を詰まらせた。

 私に言い負かされたからではない。

 私が石の意味を知っていたからであろう。

 いや、そもそも要石が五色で五つあるという点で、古の知識を基にした方角を守護する知恵でしかないのだ。

 それがアンティゴア人だけの秘密だったとしても、もともとは古の失われた知識でしかないのならば、魔法使いである私が知らないわけはないだろう。

 魔法使いは森羅万象と過去と未来を読めて初めて魔法が行えるものなのだ。


「黒を手に入れるのが先。これこそ守らなければいけないルールだわ。」

「君は黒がどこにあるか知っているのか?」


 私はノーマンのこの言葉で、彼が黒の要石の所在を知らなかったのだと初めて気が付いた。

 彼は黒の要石の場所を知らないからこそ黄色に拘ったのだ。

 石は五つ必要だが、四つしかないときは石のパワーは暴走して一つの場所へと流れ出てしまう。

 それが最後の石の位置を知らしめる印になると彼は知っていたのであり、十年探って見つけられなかった石だからこそ、土地を取り戻して気がはやる彼はすぐ目の前にある黄色の要石に拘ってしまっているのだ。


「君は知っているのか?」


「知らないわ。でも、探ることは出来る。いいえ、絶対に見つけるわ。だから、あなたはその体を治す事を考えて頂戴。」


 彼はしばし私を見つめ、そして降伏の白旗をあげた。


「あなたの言う通りにします。わが妻よ。」


「あなたは!その余計な口を閉じておくことを学びなさいよ!」


「どうして?君は俺達と一蓮托生になったんだ。俺と、君。もう夫婦みたいなものじゃない。」


 そうして笑おうとした男は、口元を引き攣らしたまま崩れ落ちた。

 私が何かしたわけではなく、普通に人間である彼の体の限界が来ただけだ。

 ノーマンの身体は静かに控えていたドゥーシャに受け止められて、そしてドゥーシャによって私のベットに再び戻された。

 ドゥーシャによって、横たえた時に服を脱がされているので、私のベッドに全裸で寝ころんでいるが正確だろう。


「どうしてわざわざ丸裸にするのよ。」


 ドゥーシャは初めてといえる人懐っこい笑みを私に見せると、私がその整った顔立ちにどきりとすることを一生取りやめたくなることを言い放った。


「夫婦のベッドですから。」

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