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君に三食昼寝付きを差し上げます!  作者: 蔵前
彼は王の旗を背負うもの
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フォルモーサスが受けた悪夢

 私はヤカンでノーマンの姿を見た後にテントウムシを飛ばしたが、そのテントウムシを通して見ることとなったのは、拷問官達がノーマンへの新たな拷問と処刑準備をしている姿だった。

 人を金属の柱に拘束して立たせるための台には首と両手を固定する板が設置されており、それが意味するものはノーマンを見世物に晒すということだ。


 それだけでもひどいのに、拷問官達が下卑た風に笑いながらドラゴンの頭が装飾されたペンチをかちゃかちゃとさせていることに、私はあの台に乗せられたノーマンが指を潰されるかもと慌ててディーナを叩き起こしてしまったのだ。


「起きて!急いで!これからノーマンを奪還する!このままじゃ、彼の指がドラゴンの顔をしたペンチで潰されてしまう!」


 ディーナは飛び起きて、それは睾丸を潰すペンチだよ、と叫んだ。

 私はディーナの腕をつかむと、ディーナの記憶を元にフォルモーサス城の前へと移動した。



「え、どうしてここ?」


 私達の目の前に城壁は聳え立っているだけで、門など無いただの北側の壁でしか無いのだ。


「このまま直線方向の建物の下に、ノーマンが捕らえられているの。」


「ああ、そうね。まさか近衛連隊長が最下層の罪人の為の牢に落とされるなんてね。彼の見通しの甘さにはぞっとするわ。」


「彼は本当はどこの牢に落とされると考えていたの?」


「王宮の地下よ。大罪人でも貴族やそれなりの身分の人間には裁判を受ける権利があるわ。彼もそこに入ると思っていたのでしょう。」


「どうしてそんなにそこの牢に入りたいの?って、もしかして、要石?」


「ええ。フォルモーサスには一番大事な黄色の石がある。あれが四つの石の中の中心となるのよ。もう、相談も無く突っ走るなんてね、うちの間抜けな王様は。ティア、私は彼を助けるにもあなたの家に武器を忘れたわ。」


「武器なんか、私がいくらでも手渡せるから心配は無用よ。」


 金色の魔法陣を呼び出すと、私はそこから自分の杖を掴みだし、それから、ディーナには過去のクエストで拾っていた細身の剣を取り出して手渡した。


「ああ、凄い。これはかなりの一品だ!」


「喜んでいただけで良かったわ。それは差し上げます。これから私がする事に巻き添えになって、あなたも私と一緒に逃亡生活になるかもしれませんものね。」


「うふふ。最高だわ、あなた。」


 女言葉で褐色の瞳を炎色に輝かせたディーナは女性ではなく男性そのもので、彼は私に手渡された剣で試し切りがしたいと興奮しているようでもあった。


「さあ、エレメンタインの成せる破壊をとくとご覧あれ。」


 私とディーナは虹色の魔法陣に囲まれ、黄緑色の魔法陣は弾けると次々と地面から芽吹いていき、終には金属のような蔦で出来た半径五十メートルほどもある茨の森となりった。

 私達を囲み始めた兵士をそれ以上私達に近づけさせない、茨による分厚い防御壁である。

 

 カシン。


 私達を城壁から狙う兵の矢をディーナが打ち払った音だ。


 茨を私達の屋根になるように再び伸ばした。

 太陽が煌々と照っているからか、茨もワサワサと緑色の葉を纏い始め、私達は正面はがら空きだが、それ以外は茨に囲まれた格好となった。

 空から見れば歪な半円のメタルな森が見える事だろう。


「今が昼日中で良かったわ。」


 私の青い魔法陣が弾けると大きな水で出来たレンズとなった。

 それは太陽を遮るように存在し、つまり、レンズに集約された太陽光はそのまま攻撃的ともいえる熱波を城壁に与えたのだ。


 どおおおおおん。


 大きな音と共に城壁の一部、私達の正面に火の手が上がった。


「魔法防御がある壁でしょう。」


「ええ、その通り。魔法には防御が出来ても、物理攻撃には対処できない。どんな城も投石器で崩れてしまうじゃ無いの。」


「あら、その通り。では、私があそこの穴から飛び込むのね。」


「まだ穴は開いていない。炎が立って魔法防御の穴が空いただけ。魔法防御の穴が空いたのならば、私の魔法攻撃が有効だって事。」


 真っ赤な魔法陣が弾けると、私達の目の前で大きな火柱が吹き出し、それはそのまま燃えている城壁へと突き刺さった。

 大きな爆発音をさせて城壁は粉々に崩れ、私はレンズの向きを物見やぐらへと変えた。


 レンズに驚いた兵士達はこけつまろびつ物見やぐらから逃げていったが、これからそこに登られては困るので、人がいないことを良い事に物見やぐらに心置きなくなく熱波を照射した。


 物見やぐらは轟音を立てて崩れ落ちた。


「逃げるための場所の確保もあるし、北側だけでも壊しつくすわ。」

「うふ、素敵ね。では、私は飛び込むわ。」

「馬が必要でしょう。」


 私は厩に閉じ込められていたらしいノーマンのネフェルトを呼び出したが、呼び出されたネフェルトは完全な裸馬であった。

「あ、鞍がない。」

「かまわない。この子は賢いもの。」

 ディーナはひらりと馬に乗り上げると、そのまま馬と騎手は風のようにして私が崩した城壁の穴へと消えた。

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