ラガシュ城の敵味方
執政棟の方にいた敵兵達は、ノーマンによって戦死者を二名も出していたにもかかわらず、私達に寝返っただけでなく私達を友好的に受け入れた。
私達が彼等が守るべき城の姫であるエマを守っていたことも大きいが、真っ当に城を守っていた立場だったにもかかわらず、突然現れた盗賊崩れの逃亡兵の集団に使われる立場に成り下がっていた事が彼らなりに納得いく訳が無かったからであろう。
本当の敵が自分達にとっては許しがたい突然現れたごろつきの大将だと知れば、また、領主夫妻がそれらに迎合しているのでは無くて人質だという情報を得たのならば、彼等には天の思し召しぐらいのものであり、ここでノーマンは十五名の部下を手に入れた。
どうして彼の部下と思ったのかは、私達と共に戦うと誓ったにもかかわらず、兵士達の目線が常にノーマンの判断を仰ぐように動いている、という所だ。
「彼はそこにいるだけで兵士達の中心になってしまうのね。すごいわ、これがカリスマって言うものなのかしら。」
「まあ、一応は王様だ。」
イーサンの返しに考えてみれば、八歳の時に国が滅ぼされた彼であるが、国が滅んでいなければアンティゴアの王様として君臨していただろう人であった。
「あら、まあ。彼が女性に見境が無いのは王様属性であるからなのね。」
「ハハハ。血族を守るための種馬として習性か!君は酷い事を考える。」
「もう!イーサンたら!」
私達は囁き合っていたはずだが、兵達に囲まれて領主の間までの道のりを兵士達と打ち合わせていた男は地獄耳だったらしく、私達でも私個人限定で物凄く怒った目を向けた。
怖くありませんよ、だ。
しかし、私の横にいたエマは彼の視線に脅えたのか、私の左腕に急に絡みついてきた。
あら可愛いと彼女を見れば、彼女はもう一人の王様属性を持つ少年に対して指を差したのである。
「大丈夫なの!あの子は!リヴァイアサンに取り込まれてしまったの?ずーと心あらずでふわふわしているじゃないの!」
心あらずなのは仕方がないであろう。
リヴァイアを私が呼び出す度に、彼はリヴァイアが消えるまでリヴァイアと遊び倒すというお子様でもあるのだ。
「うん、まあ、久しぶりだからかな。あれはあの子の大好きなお遊びなの。」
ベイルはリヴァイアを小型化させると馬のようにして跨り、そこらじゅうをぐるぐると飛んで遊んでいるのである。
私はリヴァイアと遊んでいる子供をがっかりさせることになると考えながらも、そろそろ彼女を戻すとベイルに声をかけた。
「ええ!一緒に行くのはどうですか?リヴァイアさんが一緒だったら百人力ではないですか!」
繊細なリヴァイアが敵との合戦中に混乱して大暴れするだろう事は想定内で、暴れられたらリヴァイアの制御に集中しなければならなくなって私が困る。
「リヴァイアさんは怖がりさんでもあるでしょう。またあとで出してあげるし、あなたにリヴァイア召喚を教えてあげるから!」
ベイルはきゃあと嬉しそうな声を上げると、リヴァイアを床の方へ降り立たせたのだ。
そして、ぴょんとリヴァイアから飛び降りて、そして、なんと私の首に両腕を絡ませて抱きついた。
「わあ!リジー!ありがとう!僕はリジーのお婿さんになりたい!」
「まああ!あなたはなんて可愛いの!」
「ひどいよ!本気なのに赤ちゃん扱いして!」
子供でしかない振る舞いをした少年は赤ん坊のように頬を膨らませた。
私は彼の可愛らしさに、私に抱きつく彼をぎゅうっと抱きしめた。
「もう!赤ちゃんじゃ無いわよ。あなたの言葉が嬉しいからあなたを可愛く感じたって事じゃ無いの。」
「そうなの?それなら、いいです!」
ベリルは再び私にぎゅうと抱きつき返した。
「ひどいよ!何だよ、それは!俺とベリルの行動に違いは無いだろ!」
大人でしかない男が子供のように怒って抗議してきたが、私はノーマンには可愛いとは感じなかったので、これ見よがしにベイルをもっと抱き締めた。
「君は何て悪女なんだ!」
あら、どうにでもなる女よりも、悪女って思われる方が素敵ね。
※ 本編で書けなかった事
リヴァイアさんはリヴァイアサンではありません。
リヴァイアという名前の魚型妖精さんです。
さんづけなのは、リガティアの忘れられない人が「魚はさんをつけるもの。」と言ったから。
でもそのせいで、「リバイアサンを呼び出せる大魔女スゲー。」と勘違いされています。




