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99回 やって来たのを生かして帰すわけにもいかない 13

 それはこの地にやって来る事を決めた時点で定まっていたのかもしれない。

 誰も帰ってこなかった場所である。

 そんな所に踏み込めばどうなるかは分かりきった事だ。

 だが、何が起こってるのか調べないと今後に差し支える。

 そう思ってわざわざやってきた。

 最悪、自分達も帰ってこれないと覚悟して。

 それは今実現しようとしていた。



 ユカリ以外の者達は全て捕らえられている。

 残ったユカリも疲労が重なってきた。

 それでも敵を倒す事が出来ない。

 この状態が続けば、待ってるのは敗北だけである。

 何も得る事無くそうなっていくだろう。

 それが分かるだけに、ユカリは絶望に陥っていく。



 望んだ結果であるわけがない。

 こうなる事も覚悟していたとはいえ、そうなって欲しいと願ってたわけではない。

 求めていたのは、やるべき事をこなして無事に帰還する事。

 敵に倒される事ではない。

 他の多くの義勇兵がそう願ってるように、ユカリもそうなるよう求めていた。

 その為に人事を尽くし、天命を女神イエルに託してきた。

 その結果がこれだというのは納得しきれるものではない。



 それでも義勇兵である。

 最後が悲惨なものになる事も考えてはいた。

 また、武家に生まれて子供の頃から言い聞かせられてきた。

 敵に倒されて最後を迎える事もあると。

 そうなる事も考えて生きていけと。

 その上で、そうならないように考え、動いていけと。

 その教えを守り、そうしてきたつもりだった。

 義勇兵であるから危険を避けるわけにはいかないが。

 その上で最善を常に模索して動いてきた。

 おかげで今まで生き残ってこれた。

 剣の腕だけではない。

 教え込まれた戦法・兵法などを用いもした。

 十全にこなせてきたわけではないが、出来る事は全てこなしてきた。

 しかし、それももう終わろうとしている。



 細剣を持つ腕が重くなる。

 足も思うように動かない。

 体が左右にぶれる。

 思った通りに体が動かない。

 手足の動きに振り回されてしまい、まともに立つ事も難しい。

 繰り出す剣の切っ先も鈍る。

 その剣を払う相手の一撃一撃に手が痺れる。

 威力を受け流す事も打ち消す事も出来なくなっている。

 何より、どう動けばいいのかが分からなくなってきている。

 次の一手を考える事が出来ない。

 意識が朦朧としてるわけではない。

 疲れて頭が働かなくなってるのだ。

 長引いてしまった戦いのせいで、ユカリの動きは大幅に鈍くなっている。

 もうこれ以上どうにもならない程に。



 対してユキヒコはそれほど疲労があるわけではなかった。

 攻めあぐねてはいたが体力そのものはそれほど消費してない。

 元々の体力差もあるが、身体能力も強化されてるためだ。

 感覚の強化程では無いが、体も強くなっている。

 戦いが長引いたおかげで、これが有利に働いた。

 動きの鈍ったユカリにユキヒコが踏み込んでいく。

 上段から振り落とした刀で細剣を叩き落とす。

 攻撃手段を失ったところで、更に詰め寄りユカリを掴む。

 刀を捨てて飛びかかり、相手がナイフを取り出すのを制す。

 組み討ちに持ち込んで相手を地面に倒し、腕をひねりあげる。

 引き抜いた小太刀でユカリの足の腱を斬った。

 ついでに細剣を握っていた右手の腱も。

「ぐ……」

 小さなうめき声がユカリの口から漏れた。

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