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76回 相手の力をそぎ落とすため 8

「だって負ける訳にはいかないだろ」

 極めて自然体でユキヒコは説明をした。

「俺も向こうにいた時はお前らに何の遠慮もしなかった。

 殺しても何の後悔もなかった。

 懺悔だってしなかった。

 それが当たり前だと思ってた。

 それと同じだ。

 こっち側でやってるだけで」

 それはそうだろう。

 敵に情けをかけるわけにはいかない。

 確実に倒し、二度と敵対しないようにせねばならない。

 でなければ、次は自分が殺される。

 だが、そうだとしてもここまで出来るものなのか?

 相手に負担をかけるというだけで、無惨な姿で生かしておこうとするのか?

 出来るとしても、何がそうさせるのか?

 そこまで割り切る事が出来るのは何故なのか?

 それが邪神官やイビルエルフにも分からないところだった。

 余程の恨みがあるのか、そうしなければならない理由があるのか。

 そこが彼等にも分からないところだった。

 そんな二人にユキヒコは、

「俺から大事なもんを取ってたんだ。

 俺が大事なもんをとっても構わんだろ」

とだけ答えた。

 説明が不足してるその言葉の真意は理解出来ない。

 だが、二人は余程の事があったのだろうという事だけは感じ取った。

 それがこの事態を招いたのだろうとも。



 だが、それを正そうとは思わなかった。

 何があったかは分からないが、それが彼等にとって悪い事を招いてるわけではない。

 やってる事に同意は出来ないし受け入れがたい。

 しかし、効果はしっかりと出るのも分かっていた。

 ろくに身動きが出来ない者を抱える負担。

 これを抱えてはろくな動きは出来ない。

 それがもたらす効果を考えるだけで背筋が凍る。

 とてつもない効果をもたらすだろうと。

 普通に戦うのとは違う。

 損害を出す事もなく相手に損失を強いていく。

 時間はかかるが確実に相手は衰退していく。

 その先には、壊滅しかない。

 今、この町にいる腹を空かせた者達のように。

 何も出来ずに動けなくなり、そのまま潰えていく。

 そんな未来しかない。

 戦闘なぞする必要もない。

 これを打破するには、重荷になってしまう者達を捨てるしかない。

 しかし、そんな非情の決断が出来る者はそう多くはない。

 余程追い込まれない限り、同胞を切り捨てる決断など出来るものではない。

 それが出来るのは、心を持たない者か冷徹に現実を直視出来る者くらいだ。

 あるいは、切羽詰まって後が無くなった者。

 大半の人間はこの切羽詰まるまで何も出来ない。

 そうなってからでは遅いのもまるで分からないままに。



 ユキヒコが強いてるのはそういう事だった。

 時間はかかるが確実な効果が見込めるもの。

 それを冷徹に実行している。

 その理由や原因が怒りや憤りであったとしてもだ。

 策を考え実行するにあたってはかなり冷静である。

 余計な事を全く考えない。

 余計な感情も全く抱かない。

 多少はそういったものもあるだろうが、それに流される事は無い。

 やるべき事を確実にこなそうとする。

 躊躇う事無く非道で非情な事をこなしている。

 そこに二人は狂気を感じた。



「躊躇う必要は無いさ」

 事も無げに呟く。

 その声の平坦さが異様にすら感じた。

「どうせ敵だ。

 いつか潰すんだ。

 だったら徹底的に利用しよう」

 その為にここまで出来るのが恐ろしい。

 あるいは、おぞましいのだろうか?

 その違いを邪神官とイビルエルフは区別出来なかった。

「これと同じ事をこの辺りでやる。

 それでこの地域を潰そう」

 それをユキヒコは目指している。

 その為の策を実行し、目的を実現しようとしている。

「たぶん、そんなに難しくはないと思う」

 おそらくそうなのだろう。

 実際にそれをやっているのだから。

「だから、確実にこの辺りは殲滅しよう」

 その言葉に二人は黙って頷いた。

 もとよりそのつもりである。

 しかし、そこに至る道は思っていた以上におぞましいものになりそうだった。



 そして二人は気づいてなかった。

 ユキヒコが求めてるものに。

 ユキヒコが言っている意味に。

 ユキヒコはこの地域を殲滅すると言った。

 それを二人は、敵を排除する事だと考えていた。

 無意識にこのあたりを占領するものだと考えていた。

 そんな事、ユキヒコは一言も言ってないというのに。

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