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73回 相手の力をそぎ落とすため 5

「そろそろだな」

 町を遠巻きに見ていたユキヒコは決着をつける事にした。

「丁度いい頃合いだろう。

 攻撃を仕掛けるぞ」

「分かった」

 グゴガ・ルがユキヒコの指示を伝えに行く。

 それを聞いたゴブリン達がいきり立ち始める。

 ようやくか、と誰もが興奮していた。

 随分と待たされていた彼等は、待ちに待った襲撃の時にうかれている。

 相変わらず、死ぬ危険よりも略奪の楽しみしか見ていない。

 それでも以前よりはマシになってはきている。

 生き延びて経験を積んだ者が増えたせいか、動きに無駄がない。

 下手な力みもない。

 良くも悪くも力が抜けている。

 気持ちの方も変な気負いがない。

 緊張や興奮によって視野が狭くなったり思考が停止したりはしていない。

 体も程よく動ける程度に力が入ってる状態を保ってる。

 ゴブリンでありながら、戦いに向けた気構えを抱いている。

「……学習するんだな」

 意外、と言ったら失礼かもしれない。

 しかし、ユキヒコの良く知るゴブリンからは想像しにくい姿であった。

 頭や体をしっかり使ってるところは。

 グゴガ・ルのような例外がいるのは分かってはいてもだ。

(このままいけば、こいつらも成長するのか?)

 そうなった姿が想像しにくい。

 しかし、なってくれるならば今よりも幾らかでも成長してもらいたかった。

 そうなってくれれば、今後の展開が楽になる。

 だが、将来の事より目の前の問題。

 まずは町の攻略が先である。



 その夜。

 用意していた梯子を運び、壁を乗り越えていく。

 敵は見張りの数も少なく、ゴブリン達に気づいた様子もない。

 見張りの数が少ないし、日常の疲労で注意力も低下している。

 危機感や恐怖はあるが、それをもってしても疲れを払拭する事は出来ない。

 おかげでゴブリン達は比較的簡単に町に侵入する事が出来た。

 明け方まであと少しという頃である。



 町が起き出し、人々が家から出始める。

 今日もまた憂鬱な一日が始まると思うと元気はつらつとはいかなかったが。

 そんな彼等に、これまでで一番の不幸が襲っていく。

 家を出ようとした者達にゴブリンが襲いかかり、そのまま家の中まで侵入される。

 悲惨な目にあってきた町の者達は、ついに最悪の事態を迎えていった。



 最初は町の一角の制圧。

 可能な限り音を立てずに家の中を制圧し、町の者達を拘束していく。

 当然ながら、男は手足を潰されまともに動けないように。

 女は戦利品として襲われていく。

 口には当然猿轡をかまされ、声を出せないようにされて。

 こうして町の一部が沈黙していく。

 あとは裏道を通って他の家を制圧していく。

 通りで遭遇した者もその場で制圧していく。

 そして、押し入った家に放り込んでいく。

 少しずつ人を潰していき、町を侵食していく。

 その事に町の者達が気づく事もないうちに。



 ゴブリンの侵入に町の者達が気づいた時には既に手遅れだった。

 半分以上の者達が襲われ、まともな抵抗が出来なくなっていく。

 何人かは抵抗しようとしたが、多勢に無勢。

 一斉に何人ものゴブリンに襲われてはどうにもならない。

 もれなく手足を潰されて抵抗不能にされていく。



 そんな町から何とか脱出を果たす者もいる。

 しかしそれらも外で待機していたゴブリン達に行く手を阻まれる。

 即座に捕まり、相応の処置をされていく。

 また、外に出るにあたり門を当然ながら開けている。

 そこから外にいたゴブリン達が入り込む。



 町のあちこちにゴブリンが動き回っていた。

 抵抗する者もほとんどいない。

 既に陥落した状態だ。

 まだそれは進行中であるが、いずれ完了した状態になるだろう。

 遅いか早いかの違いである。

 まだ難を逃れてるのは町の領主の館だけ。

 それとてゴブリンに囲まれてしまっている。

 外部との連絡を付ける手段は無い。

 ゴブリンを突破して落ち延びる事も難しい。

 完全に詰んでいた。



 そんな町に入り、ユキヒコは抜けや漏れが無いかを確かめていく。

 五感を研ぎ澄まし、気の流れを読んでいく。

 見聞き出来る範囲で何が起こってるのかを把握していく。

 全てが見通せる訳ではないが、それでも多くの事が分かる。

 集結する事も出来ず、個別にゴブリンに制圧されていく敵の気配がだ。

 まだ制圧しきれてない場所もあるが、町の多くが沈黙している。

 程なく町は完全にゴブリンの制圧下に入るだろう。

 そうなればユキヒコ達の勝利だ。

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