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72回 相手の力をそぎ落とすため 4

 戻ってきた者達を見て、町は絶望的な状態になっていった。

 頼みとしていた救援が来る可能性が無くなったのだ。

 何時襲ってくるかも分からないゴブリン。

 抱えてしまった大勢の負傷者。

 急速になくなっていく食料。

 不安の材料は多い。

 そんな中で冷静さを保ってられる者は少ない。

 一部、まだ冷静さを保ってる者達もいたが、それとて現状を打開出来るわけではない。

 姿の見えない敵の姿に怯え、これからどうすればいいのか悩んでいる。

 妙案が出て来るわけもなく、かといってこのまま状況を放っておくわけにもいかない。

 無視しても何かが改善するわけではないのだ。



 それらが摩擦や衝突にもなっていく。

 当然ながら潜んでいるであろうゴブリンへの対処。

 これには、外に出て見つけて駆除するべきだという意見が出てくる。

 しかし、町の兵力でそれを行うのは難しい。

 まずはゴブリンを発見せねばならないが、それをするだけの人手がない。

 仮にそれをやったとしても、戦って勝てるのか分からない。

 村人や帰還した護衛や商人の口から、相手が大量にいるのが判明している。

 それらに対抗出来るのかどうかである。

 町の者が総出で当たる事が出来るならどうとでもなるだろう。

 聞き取りから判明してる数は町の総人口より少ない。

 そこから女子供に老人を差し引いても、数百人は戦える。

 この人数であたれば、ゴブリンなど恐れる事はない。

 だが、そんな事が出来るわけもない。

 相手はどこに潜んでるか分からないし、見つけたとしてもそこに人を集中させるのは困難だ。

 捜索中は広範囲に人をばらまかねばならないのだ。

 見つけてから集結するとなると時間がかかる。

 それまでにゴブリンは逃げ出すだろう。

 人数差があるなら襲ってくる可能性もある。

 そうなった場合、捜索に出た者達に犠牲者が出る。

 それは避けたいところだった。

 犠牲が出るのは出来るだけ避けたい。

 確実に相手を捕らえて殲滅出来るならば、それでも強行してたかもしれない。

 だが、その確証も無いのだ。

 やれる事は恐ろしく少なかった。



 抱えてる村人も問題だった。

 酷い怪我を負ってるので動かすのが困難だった。

 体力は食事をとる事によってかなり回復してるが、それでも日常生活には支障がある。

 この者達を抱えていても様々な場面で負担になってしまう。

 もし彼等がまともな状態ならば、協力をしてもらってゴブリン捜索にも出る事が出来ただろう。

 だが、それは望めない。



 この為に町から脱出するという手段も封じられている。

 八方ふさがりと言えるこの状況では、これも対処方の一つとして検討されている。

 問題の解決にはならないが、このまま被害を拡大させるよりは良い。

 しかし、それをするには村人の存在が重荷になる。

 まともに動けない彼等を連れていけば、どれだけ不利になるか分からない。

 移動途中にゴブリンに襲われたら、村人達を守りながら動く事になる。

 また、急いで逃げだそうにも、手足がまともに動かない村人が足を引っ張るだろう。

 村人を置いていけるならこういった悩みはなくなる。

 しかし、そこまで非情になれる者はそう多くはなかった。

 何よりも、それは教会が反対している。



 それでも、村から逃げてきた者達を捨てていけば、まだ助かる可能性はある。

 残った町の者達だけでも確実に逃げ出せるだろう。

 途中でゴブリンに襲われても、全滅は避けられる。

 そうなった場合、数百人くらいは逃げ出す事に成功し、事情を伝える事が出来る。

 損得勘定だけで計算するなら、これが考え得る限り最善の選択であろう。

 確実に助かる人数が最も多い。

 しかし、それが出来ないところに、町の者達の限界があった。



 そんなこんなでこの先どうなるかを悩みながら時間が過ぎていく。

 言いしれぬ不安に町の者達は顔を強ばらせる日々が続いていた。

 それに耐えかねて夜陰に紛れて脱出する者もいる。

 それも程なく無くなる事になる。

 逃げ出した者が村人や使者達と同じような状態で帰ってきたからだ。

 迂闊に外に出るわけにはいかない────誰もがそれをはっきりと理解した。


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