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67回 本隊、行動開始 2

「おつかれ」

「ああ、おつかれ」

 声をかけられたグゴガ・ルは村の外を見たまま応えた。

「悪いな、見張りをさせて」

「構わん。

 誰かがやらなくちゃならない事だからな」

「でも、お楽しみを後回しにさせちまってる」

「気にするな。

 俺が望んでこうしてるだけだ」

 その言葉通り、グゴガ・ルは見張りを自ら買って出ていた。

 同じように何人かは自ら見張りを望んで配置についている。

 毎度の事ながら、変わったゴブリンであった。

「いいのか、遊べなくて」

「良くはないが、仕方ない。

 こういう時が一番怖いからな」

「気がゆるんだ時に襲われたら大変だ……って事か?」

「ああ、そうだ」

 それは前にグゴガ・ル達から聞いた事だった。



 お楽しみなどを後回しにして仕事に励む理由は何なのか?

 それはユキヒコにとって不可解な事だった。

 欲望を何よりも優先すると言われるゴブリンらしくもない。

 それをする理由はいったい何なのかが気になった。

 その答えがこれである。

『こういう時に襲われて死んでいった奴らを何人も見てる』

 だからこういう時は見張りなどに立って周囲を警戒してるという。

『どんなに楽しくても、死んだら意味がない』

 もっともな理由だった。

 だが、分かっていても実行出来る者は少ない。

 誰だって面倒な事よりも楽しい事が好きに決まっている。

 にも関わらず、優先するべき事に自らあたれるというのは貴重な素質である。

『そんな格好良いもんじゃない』

 褒めたユキヒコにグゴガ・ルは笑いながら首を横に振った。

『何かあれば、すぐに見つける事が出来れば、そのまま逃げる事が出来るだろ。

 だから俺は見張りをしながらどこかに隠れてるんだ』

 そして、仲間に報せる事もないという。

 余裕があれば声をかけるが、そうでないなら見殺しにしてその場を後にする。

 何の事は無い、我が身かわいさの為にやってる事だという。

『死にたくはないからな』

 だから逃げてるとグゴガ・ルは答えた。



 そんなグゴガ・ルをユキヒコは評価していた。

 仲間を見殺しにするのはどうかと思うが、その状況を考えれば仕方ないとも思う。

 実際、周囲の事を気にする事もなく、欲望優先で馬鹿騒ぎをやってるなら擁護できない。

 楽しむのが悪いとはいわない、むしろ出来るならばどんどん楽しめば良いとも思う。

 だが、それも安心して遊べる状況での事だ。

 戦場で、周囲に敵がいるかもしれない場所で、警戒もせずにいるならば相応の報いを受ける事になる。

 いくら何でもそれは危機感がなさ過ぎだ。

 そんな者をわざわざ守る為に自分まで危険にさらすのもばかばかしい。

 駄目な奴、出来ない奴は淘汰されて然るべきであろう。

 救いようがない輩というのはどこにでもいる。

 そんな者に巻き込まれてはたまらない。

 道連れは御免である。

 それはゴブリンも同じなのだろう。



「でも、今日くらいは大丈夫だろう」

「それが見えるのか?」

「まあな。

 この周りにはおかしな奴はいなさそうだ」

「ならいいが」

 少し心配そうな調子で呟く。

 ユキヒコを信じてないわけではない。

 だが、それでも念には念を入れてる。

 どこまでも慎重な、あるいはとてつもなく臆病な態度だ。

 だからこそ今まで生き残ってこれたのだろう。

「その調子で頼む」

 だから仕事を任せられる。

「ここからが本番だから」

「分かってる」

 返答は短く、しかしはっきりしていた。

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