53回 その場における己の立ち位置 6
出来る者、優秀な者には感謝を口にしたり褒め称えたしていった。
その一方で悪さをする者には徹底的な罰を与えていった。
ただ、これは優劣による差別ではない。
善悪でもって違いをつけていった。
基本的には示した規律を守る。
これが出来るかどうかにかかっていた。
それも担当する仕事をこなせるかどうかという事ではない。
勤怠はどうなのか、職務態度はどうなのかといった部分を見ていった。
成果がどれだけ上がったかは、あえて無視した。
もちろん、高い成果を上げてる者は優先的に優遇出来る用にしたが。
しかし、成果がどれだけ上がるかというのは、才能によって変わる。
受けた訓練によっても変わる。
何より、運の善し悪しによっても変わる。
優劣はついても、これで善悪を決めるわけにはいかない。
それでは出来ない者はいつまでたっても悪者扱いになる。
これはこれで間違った扱いだろう。
そうではなく、仕事にしっかり取り組んでるかどうかを見ていった。
時間がかかってもとにかく自分の仕事をこなそうとしたか。
そこを見ていった。
言い方を変えると、サボる、手を抜くといった事をしてるかどうかである。
これには無駄な作業をわざと続けて、長時間勤務をこなしたと装う事なども加わる。
やるべき事をやらず、作業を放り出すような者が処罰の対象となっていった。
更に言うならば、人に当たる態度なども見ていった。
立場や規律などを理由にして他者に高圧的な態度をとっていたり。
あるいは仕事を怠けるためにあれこれ言い訳をしていたり。
必要もない最低水準を勝手に設けたり。
何よりも、他者との接し方に問題があるなど。
こういった者達を次々に排除していった。
このあたりになると、仕事に必要な規律以前の問題ではある。
言うなれば人としての振るまい方の善し悪しになっていった。
喧嘩を売らない。
挑発しない。
悪口を言わない。
物を盗まない。
このあたりは仕事をするしないといった事ではなくなる。
誰かと一緒にいるために必要な、基本的なあり方と言っても良いだろう。
これらが出来るかどうかがユキヒコにとって重要だった。
人としての資質といって良いのかもしれない。
これらが守れない、身についてない人間とは共同作業が絶対に出来ない。
やったとしても、無駄な争乱が起こって手間が増えて面倒になってしまう。
たとえどれだけ技術や知識があっても、これではどうしようもない。
ましてや今相手にしてるのはゴブリンである。
下手にこれらを容認してしまったら、大きな騒動に発展しかねない。
無駄な騒動を起こさない。
これがユキヒコが優先する事項になっていった。
これが出来る者をまともに扱っていった。
報償をだすわけではない。
ただ、食料やら寝床など、一般的な生活において当たり前の待遇を与えていった。
また、ゴブリン達が求めるお楽しみも、こういった事が出来る者達にだけ与えていった。
そうでない者達は、他から隔離して扱う事になる。




