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52回 その場における己の立ち位置 5

 邪神官とイビルエルフを悩ませてる頃。

 原因のユキヒコと言えば、それらを気にする事なくゴブリンの間を回っていった。

 言ってる事などは伝わってくるが、それらについて何か言うつもりもない。

 寝返ってきた直後の人間など簡単に信じられないし、扱いに困るのも当然だろうと割り切っていた。

 むしろ、それなりの待遇が与えられてる事にとりあえずの満足があるくらいだ。

 それを更に向上させる為にも、今やれる事をこなしていく。



 まずはゴブリン達を使える状態にしなくてはならない。

 聞けばゴブリンはまともな訓練をほとんど受けてないという。

 これはゴブリンの学習能力の低さなどによる。

 教えても上手くおぼえられない。

 それだけの才能や能力がない。

 また、知識なり技術をおぼえても、それは低いところに留まるのが常だった。

 なので、それほど熱心にものを教えなくなった。

 これはやむをえないものがある。



 だが、そのままではさすがに困る。

 何とかある程度の段階に到達してもらわない事にはどうにもならない。

 そこでユキヒコは出来る事から可能な限りやっていった。

 効果が出るとまでは思ってもいなかったが。



 まずは規律ある生活から始めた。

 とはいってもそう難しい事ではない。

 挨拶をする、掃除をする、時間を守る。

 基本的なこれらから始めた。

 最低限、これらが出来ないとどうにもならない。

 出来ないというより、おぼえようともしないなら手の施しようがない。

 幸い、さすがにゴブリンでもこれらを拒否するような者はそう多くはなかった。

 比較的簡単にこなせる、というのも大きいのだろう。

 持って生まれた素質やら能力やらもさほど必要無い。

 高度な訓練が必要というわけでもない。

 比較的簡単にできる事である。

 だから、ゴブリンでもおぼえる事が出来た。

 ここから全てが始まった。



 これによってある程度規律が守れる者などを選別するというのもあった。

 一人一人の自由は確かに必要だが、ゴブリンの場合は単なる無法地帯になってしまっている。

 例え規則や法律などが無くても、人として守らねばならない事というのはある。

 ゴブリンはそこが抜けてる者が多かった。

 そもそも、不文律などを守るという気質を持ち合わせてるかどうかも分からない。

 こういう所を見極めるための、比較的簡単にできる規律を用いてみた。

 簡単にできる事すら出来ない・やらないのでは話にならない。

 そういった者達は、容赦なく排除していった。



 多少なりとも規律を守れる者には、簡単な事をやらせていった。

 それが野営地の清掃なり、調理なり、資材の管理などである。

 これも仕事をおぼえさせるのが目的というわけではなかった。

 それもあるにはあったが、もっと大事な事があった。

 責任をおぼえさせる事である。

 与えられた仕事は必ず遂行する。

 遂行できなくても、やり遂げる意志や努力が出来るようにする。

 もちろん、必要な事はちゃんと教えるし、分からなくなったら何度も聞きに来させた。

 どんなものでもそうだろうが、繰り返し教える事と実行する事でしかやり方は身につかない。

 それをゴブリンにも徹底させた。

 ゴブリン達も割とこれらをしっかりとこなすようにはなった。

 ただ、清掃にしても調理にしても、資材の管理にしろ、漏れや抜けは多い。

 どうしても完璧には仕上がらない。

 その辺りはもともとの能力の低さによるのでどうしようもない。

 それでも、揺るぎない事実もある。

 以前よりは遙かにマシになったという事だ。



 ユキヒコからすれば、求める水準には届いてない。

 しかし、前よりは良い状態になった事をとりあえずは良しとした。

 上を見たら切りがない。

 何より、ゴブリンが到達出来る水準がこの程度ならば、それを認めるしかなかった。

 それ以上を求めるのは酷というものである。

 持ってる能力で到達出来る高見を超えたものを求めても無駄にしかならない。

 何より、そんな事をしたら、ゴブリン達が壊れる。

 これはゴブリンに限ったものではない。

 人だって同じだ。

 それをそれなりの義勇兵生活でユキヒコは何となく気づいていった。

 人には能力の優劣が確かにある。

 それを無視して等しく扱えば、必ず悲惨な結果になる事を。

 だからゴブリン達にはゴブリンに出来る事をこなしてくれれば文句は言わなかった。

 むしろ、少しでも良い状態をに到達し、それを保ってる事を褒めて感謝するようにしていた。

 そうする事で人もよりよい水準を保って作業をするのを見てきたからだ。



 このあたりは、義勇兵の頃に後輩などを率いていた経験が生きている。

 無理は求めない。

 出来る事を可能な限り高い水準で持続するよう求める。

 それだけで人は意外と伸びるものでもあった。

 また、自身も出来る範囲で頑張ってきたのもある。

 戦闘技術を学んでない頃は、裏方に徹していた。

 戦場に出るようになってからも、正面からぶつかるという事は可能な限り避けた。

 戦うしかない場合でも、出来るだけ弱い相手から倒していった。

 そういった立ち回りを常に心がけていた。

 やれる事を確実にこなす事だけを徹底して。

 気づけばそれなりに生き残り、長く活動していた。

 様々な技術や知識も身につけ、それなりの立場になっていた。

 階級が上がるという程では無かったが、一目置かれる存在くらいにはなれた。

 この体験や経験をゴブリン達にも用いてるだけである。



 結果としてこれが、ゴブリンの集団全体の向上に繋がっていった。

 出来ない者もいるにはいるが、全体としては以前よりは良い状態になっていた。

 もちろん、教育を頑張るだけではない。

 信賞必罰ではないが、出来る者と出来ない者で待遇に明確な差を付けた。

 そう言ってよければ、ユキヒコはゴブリンを決して平等に扱わなかった。

 徹底的に差別をしていった。


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