50回 その場における己の立ち位置 3
「……どう思う?」
「さて、どうなんだか」
とりあえずユキヒコを帰したあと、邪神官とイビルエルフは話し合う。
「あれは、かなりの難物だと思うぞ」
「そうだな」
イビルエルフは言葉少なに頷く。
「目的がはっきりしてるから迷う事は無いだろう。
だが、それ以外にないから、目的だけを見て動く」
「危なくなっても止まらないだろうな」
「一直線なだけにそこが心配だ」
二人の危惧はそこだった。
目的があるのは良い。
純粋であれば強いだろう。
その一方で、目的以外が見えない、目的の為に他の全てを犠牲にしかねない。
それが無駄な損失を増やす事にならないかが心配だった。
しかし、だからと言ってそれだけを見てるわけでもない。
「その割には周りをよく見てるようにも思うが」
「そこが分からんところだ」
悩ましいというか理解不能というか。
一直線になったものとは思えない部分も二人は見ていた。
「意外と慎重なようにも見える」
「そうだ。
少なくとも後先を考えないというわけではない」
それはゴブリン達から聞き取った事からも伺えた。
「事前の準備や、手はずを整えてはいる」
「段取りの取り方も問題は無い。
ちゃんと作戦にしている」
「拠点を落としたのも当然だろうな」
「それに思い切りもいい。
慎重になりすぎて行動に移さないというわけでもなさそうだ」
ある意味理想的ではある。
やるべき事を全てやりつつ、実行の段階では躊躇わない。
それが出来る者がどれだけ少ないかを考えると、希有な人材と言えるだろう。
「まあ、裏切ってきたのはひっかかるが」
「もう少し様子を見なければならんか」
どうしてもそこが気がかりになってしまっていた。
これが元々所属が同じ者だったら、警戒もせずに素直に受け入れられていただろう。
頼もしい仲間が出てきたと喜んで。
だが、そうではない。
邪神官とイビルエルフが憎んでもあまりある魔女(女神の呼び名)の崇拝者達の出身だ。
どこまで信用していいのか分からない。
「とりあえず、問題の無い範囲で要望を聞いてやろう」
「そうだな。
それで上手くいくなら儲けものだ」
失敗しても惜しくない範囲での援助に留める。
それが二人の出した結論だった。
「しかし……」
「なんだ?」
「それにしてもだ。
あいつのやった事を無下にするわけにもいかん」
「そうだな……」
そう言って二人は周囲を見渡す。
ゴブリンの野営地であるこの場は、以前とは様変わりしていた。




