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48回 その場における己の立ち位置

「お前か」

「敵よりこちらに寝返ったというのは」

 ユキヒコの前に立った者達は、冷淡さを感じる調子で声を漏らした。

 それは語りかけるというよりは、感想を口にしたようなものだった。

 ユキヒコを見てるが関心は抱いてない。

 むしろ隔意を感じさせるものがある。

 興味がないとか、立場の違いなどによるものではない。

 蔑みや侮蔑を含んだ冷たさである。

 それが冷ややかな雰囲気としてユキヒコ達の周囲に放たれていく。



(それもそうだろうなあ)

 二人の態度にユキヒコはそういった感想を抱いた。

 元々敵だった自分が簡単に受け入れられるわけもないと。

 また、裏切ったというがそれで寝返り先に忠誠を誓うというものでもない。

 居場所を簡単に変える輩とみなし、さほど信用しないのは当然である。

 そういった者はどこに言っても信を得る事は無いだろう。

 そう簡単に受け入れられるわけもないとは思っていた。

 加えていうならば、裏切りや寝返りが本当なのか、というのもある。



 相手への潜入工作のために裏切りを演出するのは珍しくもない。

 その為に味方を犠牲にする事だってある。

 ユキヒコがゴブリン達に協力して敵を倒したのも、そういった工作の一つかもしれない。

 そう警戒するのも無理はないだろう。

 実際、仲間を売り渡すというのは裏切りの常套手段でもある。

 ユキヒコのやった事は規模が大きいが、工作の一環としてありえなくはない。

 敵方に深く食い込むために、より大きな戦果をもっていく。

 その為ならば相当な損害を敢えて出す事だってある。

 それが個人にとって大きなものであっても、国家からすれば許容できる出血範囲ならば。

 そう考えれば、末端の拠点一つ、部隊一つくらいは大した損失でもない。

 それによって相手の深い部分に食い込み、貴重な敵情を見聞きする事が出来るならば。

 払った対価としては安くつくだろう。

 こういった事が分かるくらいには、ユキヒコも考えてはいる。



 だとしても、相手に疑われたままというのはやりづらい。

 今後の活動を考えると、出来るだけ相手からの信を得ていたい。

 それなりに規模の大きな事を考えているのだから。

 問題なのは、現状では相手に信じてもらう材料がほとんどない事である。



(手土産が他にあればいいんだけど)

 そう思うがこればかりはどうにもならない。

 一応、それなりの戦果は挙げてはいる。

 しかし、信を得るにはもっと大きな成果が必要だろうとも考えていた。

 今のところ、やった事と言えば前線の拠点一つを潰したくらいだ。

 加えて、教会の戦闘部隊である聖戦団の一部隊の壊滅。

 これだけでは少々弱いものがあるだろう。

(ゴブリン達には喜んで貰えてるけど)

 女をそれなりに確保してるので、こちらの方には受けが良い。

 だが、それだけでは幹部などは納得しないだろう。

 それはあくまで下々の娯楽が増えただけだ。

 勢力の増減を考えるとそれ程大きなものではない。

 ユキヒコはそれも含めて意味があると考えてはいるが。

 相手がそれを理解するかは分からない。

 納得して受け入れるかとなると、更に心許ない。

(もう少し頑張ってみるしかないか)

 最終的にはそういう事になる。

 更なる戦果と成果によって誠意を示すしかない。

 少なくとも、目の前に居る二人には。

 ゴブリン達の直属の上司である者達。

 イビルエルフと邪神官には。

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