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421回 その目に焼き付けるこの先の未来

「このあと、増殖したゴブリンでお前らの領域を蹂躙する」

 その通りの状況が展開される。

 目の前に、ではない。

 頭の中に直接に。

 霊魂の中に刻まれるように。

「それもこれも、全部お前らの方にいた女のおかげだ」



 ゴブリン達の増産は次々に行われていった。

 イエル側の領域を蹂躙して制圧し、女を確保する事で。

 その後はゴブリン達による生産活動に寄与していく。

 ゴブリンの数はねずみ算式に増えていった。



 最初は10万20万という数だった。

 それが一気に押し寄せていった。

 さすがにそれだけの数で推されては対抗しようもない。

 まして国境を越えて内側に押し寄せてきたのだ。



 しかも軍隊とは戦わない。

 村や町を襲撃し、民を襲っていった。

 そして男は再起不能の怪我を負わせ。

 女は連れ去ってゴブリン生産の道具にされていった。

 こうして確保した女でゴブリンは増産されていった。



「このゴブリンが、お前を打倒するはずだったんだ」

 後からあとからやってくるゴブリン。

 その数にのまれて、イエル側は追い詰められていた。

 一対一なら相手にもならないゴブリンに。

 しかし、それが数倍以上の規模で押し寄せるのだ。



「どんどん押しつぶされていくだろ」

 ユキヒコの言うとおり、イエル側の兵士達は次々に押しつぶされていく。

 比喩では無く、文字通りに。

 押し寄せたゴブリンに、踏みつけられていくのだ。



 大量に押し寄せるゴブリンは、それだけで武器になる。

 棍棒や槍をもって襲いかかってくるのも怖い。

 だが、本当に怖いのは引きずり倒されてからだ。

 そうなったら、数多いゴブリン達によって床にされる。

 一人一人は小さなゴブリンによって踏みつけられていく。



 どんなに小さいといっても、体重は一人20キロから30キロはある。

 それだけの重量が終わること無く行列をなしてるのだ。

 起き上がる事も出来ない。

 たとえ起き上がっても、次の瞬間にまた引きずり倒される。

 そして踏みつけられる。



 ゴブリン達が通り過ぎるか。

 踏みつけられて死ぬまで。

 倒された者達がそこから解放されるのは、その二つに一つだった。

 あるいはもう一つ。

 味方が助けに来てくれれば。



 だが、そんな味方など、とうに粉砕されている。

 ゴブリンが歩き始めてるのだ。

 そんな事、戦場の趨勢が決まってなければできっこない。

 戦って負けて壊滅し。

 それでも立ち向かって滅びるか。

 逃げて追撃されて追いつかれるか。

 そうなった結果でそうなるのだ。



 ゴブリンの行進。

 そう呼ばれるようになる戦闘方法。

 あるいはこうも呼ばれる。

 ゴブリンの絨毯カーペット



 絨毯にされた者達が後に残され。

 イエル側の者達は撤退を繰り返す。

 そんなイエル側の者達を追い詰めるゴブリンは後から後からやってくる。

 目の前の敵を倒しても終わらない。

 倒した後から次のゴブリンがやってくる。



 終盤になると、地平線まで続くような長大な列を見る事になる。

 それが幅広く展開して迫ってくる。

 イエル側の兵は、それを悪夢のように見つめていた。

 それでも戦わねばならない彼らは、必死になって戦っていく。



 それも悲惨なものだった。

 一人を倒しても、その横から三人四人がすりぬけていく。

 すり抜けていったゴブリンは、先頭の兵士を無視して先に進む。

 そして後続の兵の前に出ていく。

 後続もそれを倒そうとする。

 だが、倒してもすぐに続きがやってくる。

 そうしてどんどんとゴブリンが浸透していく。



 ゴブリンの不利な特徴と言われる小柄さ。

 それが敵戦線を崩壊させていく。

 隙間から浸透出来るゴブリンは、次々と敵兵の間をすり抜けていく。

 そして、敵兵を前からではなく、横から後ろから倒していく。

 あとは後続がそれを踏みつけていく。



 戦い方がもう違っていた。

 武器を持ってぶつかり合うのではない。

 直接倒せなくても良い。

 ただ、相手を引きずりおろせれば。

 あとは数で蹂躙できる。

 文字通りに踏み潰しながら。



 そうしてイエル側の者達は次々に倒れていった。

 100万200万という数の時すら手こずったというのに。

 今やゴブリン兵は1000万を越えている。

 一つの国家並みの数だ。

 それこそ老若男女全てを動員しなければ対抗できない。



 この時点でのイエル側の総人口はそこまで減っていた。

 もともとは複数の国を従えるほどだったのに。

 総人口も、一億近くと、この世界においては圧倒的な強大国だった。

 それが今ではその10分の1。

 小さな集落を形成していた頃に比べれば格段に大きいのだが。

 最大時に比べれば見る影も無い。

 加えて、目の前の敵と対比したら。

 既に勝ち目がどこにもない。



 そんな中でも、イエルの加護と奇跡を授かった勇者と聖女はいる。

 彼らは不利な戦線を必死になって立て直そうとしている。

 だが、それは侵攻をいくらか遅らせるだけで終わる。

 例え勇者と聖女が二万三万のゴブリンを倒しても形勢は変わらない。

 戦線の一部は持ちこたえるかもしれないが。

 それだけで終わる。



 そして大量に生み出されたゴブリンは進む。

 ただひたすらにイエル側最後の拠点へと向かって。

 残ったイエル側の民はそこに立てこもる。

 無駄なあがきと知りながらも。


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