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420回 問題すらも自動的に排除される便利な状態、そう思っていた

 こうして勇者というシステム。

 勇者というオモチャをつかって引っかき回すようになった。

 使えないでいる使えない人間を有効利用する為に。

 敵に内部崩壊をさせるために。



 特に最高なのは、既に男がいる女を聖女にした時だった。

 それ故にとられた男と、それを押しとどめようとする周りの者で軋轢が発生する。

 傘下にありながらまつろわぬ者。

 領内に押し込めた敵国の中。

 そういったところでは、こういった事をよく行った。

 そうやって少しでも内部分裂してくれればありがたい。



 そうして不満をもった者達は、色々な事をしてくれる。

 聖女を取り戻すべく突撃して殺される者。

 復讐として出身地の者達を虐殺する者。

 功績をあげて取り戻そうとして、エルに貢献してくれる者。

 とにかく様々な形で動いてくれる。

 そのどれもがエルにとっては有益な形になってくれた。



 そうでない例外もいくつかあるが、それは問題にもならない。

 起こった問題は現場で片付く程度のものだ。

 あらためて手を下すまでもない。

 多少のもたつきは発生する。

 しかし、それも大きな問題にはならない。



 問題なんてどこででも発生する。

 それによる影響も出てくる。

 しかし、それは全てにおいていえる。

 勇者関連だけではない。



 それよりも、そうやっておこる問題の方が良い機会になる。

 敵を分断させ、身内同士で殺し合いをさせられるのだから。

 それに気づかないでいるのか、分かっていても何も出来ないのか。

 相手のそんな様子を見る方が面白い。

 エルにとっては、もめ事というのはそういうものだった。



「そう思ってくれてたから助かったよ」

 ユキヒコとしてはそう言うしかない。

「もしあんたが全てに目を光らせていたら。

 俺はここまでこれなかったかもな」

 最初の段階で事を起こされていたら。

 ユキヒコが生きてここにいる事はなかっただろう。

「だけど、そうはならなかった」



 勇者がらみの多くの問題の一つ。

 そう思ってるからこそイエルは放置した。

 そこまで気を回す余裕が無かったともいえる。

 覚醒階梯をあげて能力が増大していてもだ。

 とらえられる範囲にはどうしたって限界がある。

 その中でやりくりしていくしかないのだ。



 その為にユキヒコを見逃した。

 ユキヒコが裏切った事も。

 エルにとっての敵側、異種族連合にいるのも気づかなかった。

 辺境の一カ所で戦線がひっくり返されたのは知っていたが。

 そこにユキヒコがいるとは知らなかった。



 知らないままに状況は最悪の状態に至っていた。

 戦線が押し戻される事はあった。

 だが、それも一時的な事。

 最終的には押し返し、戦線をより前進させる事が出来ていた。

 なのだが、それがそうならなくなっていく。



 後退した戦線はその後も後退し続けていく。

 一度崩れた戦線が持ち直す事はない。

 奪われた領土は二度と戻らない。

 そうなっていく己の勢力を、ただずっと見させられ続けた。

 イエルと呼ばれて久しいエルは。



「どうだ、楽しいだろ」

 己を拘束する者の声。

 そちらを向くことも出来ない。

 全身を拘束され、逃げるどころか動く事も出来ない。

 そんな状態で延々と見させられていく。

 これからの事を。

 起こるはずだった事を。

 胸くそ悪くなってもらえただろうか?

 胸くそ悪くなるようなら成功。

 悪役とは胸くその悪い存在なのだから。

 良いところなぞあるわけがない。

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