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419回 勇者という駒

 勇者は期待に応えるように活躍した。

 もたらされた力の大きさもあって、それは出来た。

 そんな勇者にエルは同行者を付けた。

 それが聖女である。



 さすがに勇者一人で戦場に突入させるのは危険がともなう。

 いくら巨大な力を与えていてもだ。

 なので、側近としての戦力をつける事にした。

 それを女だけに限ったのには、それなりの理由がある。



 まず一つは、戦地での略奪強姦に参加させない。

 その為に、身代わりを用意しておく。

 敵地がどうなろうとエルにとってはどうでもいい事ではある。

 だが、そんな事に加わらない清廉潔白な存在は良い宣伝材料になる。

 その為にも、押しとどめておくための手段を用意した。



 もう一つは、元敵国の連中を引きつけるためだ。

 その為に聖女の一人は、一カ所に押し込んだ敵国の人間から選んだ。

 それもまた宣伝効果を狙ってのものである。



 当然ながら、エル側の人間との間に軋轢も生まれる。

 だが、一緒に行動せねばエルに背くことにもなる。

 どうにか折り合いを付けねばならない。

 それを強制的にやらせるためにも、一緒に行動させた。



 仮にそれが原因で潰えても、それはそれで構わなかった。

 戦場で倒れるのは珍しくもない。

 どれほど力を与えても、無敵でも不死でもない。

 死ぬときは死ぬ。

 だが、死んでもそれはそれで美談に出来た。

『いがみあいつつも、それでも共に戦場で戦う仲間だった』と。



 また、そうなっても心が損失が出ないようにもした。

 最初に選んだ勇者と聖女。

 それは貧民やエル側にいながら恭順しない者達だった。

 そういった者に力を与え、敵と戦わせていく。

 戦果があがれば上々。

 そうでなくても、邪魔者が消えるだけ。



 そんなわけでまつろわぬ者達を次々に選んでいった。

 それだけでは制御しきれなくなるので、取るに足らない信者も選んでいった。

 そういった者が出世すれば、それはそれで教会を制御しやすくなる。

 権力にとりつかれ、エルのものを横取りしようとする者を。



 巨大になった教会の制御はなかなか面倒だった。

 エルへの服従、奴隷化ではなく、教会を牛耳ろうとする者も出てくる。

 そういった者に、

「背教者め!」

と叫んで刃を突き刺す者も必要だ。

 それを確保するためにも、下々を取り立てていった。



 そういう者はだいたいエルに感謝をして服従する。

 そして、エルに報いようと色々してくれる。

 使いやすい、しかも操作せずに動いてくれるありがたい道具だった。

 勇者や聖女の付属としては申し分ない。



 そうしてしばらく自分のところから勇者を。

 加える聖女の一人二人を元敵国…………エルにとっては変わらず敵国からとっていた。

 それがある程度続き、勇者と聖女がひろく知られるようになった頃。

 ようやく登場させる。

 敵国から勇者を。



 内部分裂────もともと別の国の者同士であったが。

 そんな所からエルの駒である勇者を出したのだ。

 困惑は大きかった。

 裏切ってエルについたとはいえ、反発する者も多い。

 そんな中で、エルに直接選ばれた者が出たのだ。

 混乱しないわけがない。



 そして、そんな勇者に聖女達を合流させる。

 これは全員エル側の女にした。

 活動中、勇者が孤立するために。

 そして、無理矢理にでも関係をもたせていくために。

 そうすれば、象徴的な存在を敵国から切り離す事が出来る。



 また、こうする事で敵を分裂させる事が出来た。

 勇者を指示する者と非難する者に。

 それもまたエルにとっては都合が良かった。

 敵の混乱はエルへの援護射撃である。



 また、そういう勇者だから話題性があった。

 悲劇の英雄として。

 奮戦しても生まれ故郷で評価されない。

 これほど悲しい事があるだろうか。

 そしてそれを慰める聖女達。

 これほどの美談があるだろうか。



 かくて初めて作った敵国出身者の勇者。

 これは、望んだ通りの成果を出してくれた。

 あるいは望み以上と言うべきか。

 勇者としての活躍でエルの下僕共はたいそう評価した。

 そして、敵国のエル側の人間と協調していった。

 それが敵国内での分裂をさらに加速させる。



 エルは笑うしかなかった。

 こんなに楽しいことはそうはないと。

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