表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
411/428

411回 決着をつける、まずはこいつから

 そんな魔術装置にとって最善の状態。

 ようやく作り出した均衡状態。

 それが一瞬にして崩壊した。

 イエル側から魔族と呼ばれる者達の消滅によって。

 これでは様々な勢力による均衡状態は作れない。



(やむをえんか)

 そうなってしまったものを元に戻す手段は無い。

 消えて無くなったのなら諦めるしかない。

(今の状態で、均衡状態を作るしかないか)

 残された者達での調和。

 それを考えていく。



「させると思ってるのか?」

 遮る声が響いた。



 誰だと魔術装置は思った。

 自分のいる場所に誰かがやってくるとは思わなかった。

 時間と空間に触れない場所だ。

 そんな所に来ることが出来る存在などいない。

 魔術装置が知る限りでは。

 だが、確かにこの場所に別の誰かがいた。



「久しぶり。

 って言っても、俺とお前には関係ないか」

 そう言いながら、相手は姿をあらわす。

 その姿を魔術装置は知っている。

「お前か」

 いつぞやか、突然消えた者だ。

 それを魔術装置はおぼえていた。



 確か、過去に戻ってイエルを消そうとしていた。

 それを魔術装置が止めたのだ。

 危険だから消そうともした。

 しかし、その直前で逃げられた。

 突然姿を消した。



 どうやってそんな事をしたのかは分からない。

 だが、何故かそうなったのだけはおぼえている。

 その後、どこにも姿が見えないので、放置しておいたのだが。

「戻ってきたか」

 魔術装置にとってはありがたかった。



 気にはなっていた危険な存在。

 それを消すことが出来る。

 それがありがたかった。

「これで調和を保つ事が出来る」



 魔術装置にとって大事な事である。

 そのために生み出され、その為に活動してきた。

 それを邪魔する存在は徹底的に排除せねばならなかった。



「では、消えろ」

「馬鹿か」

 宣言に罵倒が返ってきた。

 それだけではない。

 ふるった力が全く効果を発揮しない。

 その事に魔術装置は疑問を抱いた。

「なぜだ?」

 どうして力が発揮されないのか?

 それが不思議でしょうがなかった。



 だが、疑問の答えを得ることはなかった。

 目の前にあらわれたものは、答えることなく魔術装置を処分していくのだから。

 そこには一片の躊躇も隙もない。

 逃げ場など一切無い状態に放り込まれる。

 その中で存在そのものを消滅させられていく。



「お前は他の全ての邪魔だから消す。

 二度と復活はしない」

「────」

「お前と同じような存在もだ。

 お前を作り出すような、お前にいたるような考えも。

 そんなものを抱いてる者も。

 全部だ」

「────」



「お前の制作者にも消えてもらった。

 お前を作り出したからな。

 同じ事を繰り返されちゃたまらない」

「────」

「そいつだけじゃない。

 同じような考えをもってる連中全てもな。

 放置してたら、同じ事がどこかで繰り返される」

「────」



「お前を生み出すような考え方も。

 思いや気持ちも。

 それを綴った書物も。

 全部だ」

「────」

「病原菌は根元から根絶しないとな」

「────」



「もう二度と馬鹿げた考えなんか出させない」

「────」

「調和や均衡や中立。

 平等なんてもんは絶対はびこらせない」

「────」



「これで最後だ」

 さっさとくたばれ」

「────」

「あと、イエルとイエルの教団。

 それも潰す。

 お前の後に続けさせてやるから安心しろ」

「────」



 何も言えない。

 何も出来ない。

 危険物を消去出来ない。

 それどころか、自分の存在すら保てない。

(なぜ?)

 どうしてこうなったのか分からない。



 そもそも、どうして消されねばならないのか?

 それが全く分からなかった。

 魔術装置はするべき事をしていたのだ。

 せねばならない事を。

 世の中に調和と均衡をもたらすために頑張っていたのだ。

(なぜ、消えねばならない?)



 そんな酷い事をされる理由がない。

 あるわけがない。

 そう考えていた、魔術装置は。

(全ての調和をはかっていたのだぞ)



 全ては平等。

 あらゆるものは対等。

 それを為すために様々な事を為していた。

 なのに、それを妨げられる理由が分からない。



(このままでは……)

 世界の調和が乱れてしまう。

 せっかく保っている均衡が壊れてしまう。

 それをただしに行かねばならない。

 なのにそれが出来なくなっている。



(世界が…………)

 滅びる。

 崩壊する。

 魔術装置はそれを危惧した。



「お前が壊した世界。

 壊そうとした世界。

 俺はお前から守らねばならん」

 戻ってきた者がそんな事をいう。

(何をばかな)

 理解不能な戯言だった。



(世界は我が守っていた。

 我によって世界は保たれていた)

 事実を無視して魔術装置はそう考えていた。

 少なくとも彼の用いる基準や測定によればそうなっていた。

 自分勝手な都合の良い観測方法によって。



 それは魔術装置にとって大切な基準でしかない。

 他の多くの存在には不要なものだ。

 害悪という方がより正しいだろう。

 そんなものを世の中に振りまく方がよっぽど危険だ。



「世界はお前なんぞ必要としてない。

 お前が世界を壊してる。

 だから排除する」

「────」

「本来有るべき姿に戻す。

 それが一番まともな状態だ」

「────」

「反省も懺悔もいらん。

 悪党がやらなきゃならんのは、死滅だ。

 生きてること自体が害だ。

 死ぬことでようやく償いになる」

「────」

「さっさと死ね」

「────」



 最後まで何もいう事が出来ない。

 どこにも逃げられない。

 ただ存在をむしばまれていく。

 その苦痛に魔術装置は、声なき悲鳴をあげていく。



(ぎゃああああああああああああああああああああああああ!)

 どことも接してない場所で。

 調和と均衡と中立を掲げながら。

 停滞と衰退と悪逆非道を働き。

 全てを平等に滅亡への道に引きずり込んだ魔術装置。



 それは存在を消される恐怖と苦痛にさいなまれ。

 誰からもかえりみられる事もなく。

 ただただ無情に消されていった。

(なぜだ!

 なぜだああああああああああ!)

 そうなる理由も分からないまま。



 この瞬間。

 世界を覆っていた絶望が消滅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


_____________________

 ファンティアへのリンクはこちら↓


【よぎそーとのネグラ 】
https://fantia.jp/posts/2691457


 投げ銭・チップを弾んでくれるとありがたい。
登録が必要なので、手間だとは思うが。

これまでの活動へ。
これからの執筆のために。

お話も少しだけ置いてある。
手にとってもらえるとありがたい。


_____________________



+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ