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406回 最初に作った小さな欠片

 調和・均衡・中立を自称する存在。

 それの目的は、あらゆる勢力の善悪を中和する事だった。

 そうなるように作られ、大地に干渉してきた。

 その誕生は未来の時代にある。

 


 それを作ったのは、一人の魔術師だった。

 彼女は世の中の不均衡を嘆いていた。

 なぜ格差があるのか。

 なぜ貧富の境が出来るのか。

 なぜ人同士で差がつくのか。



 そして、なぜ異種族同士で争うのか。

 なぜ種族によって勢力の差があるのか。

 それによって争いが生まれるのが。

 それによる抑圧が生まれるのが残念でならなかった。



 だから彼女は願いを込めて一つの存在を作り出す。

 それは小さな小さな魔術装置だった。

 種類としてはゴーレムの一種と考えてよい。

 あるいはホムンクルスといったところか。

 いずれにせよ、設定された目的の為に活動していく装置である事に変わりは無い。



 その魔術装置は、機能的には大した事はなかった。

 与えられた指示や命令は少ない。

 機能そのものも小さく限られている。

 また、何よりも周囲に与える影響力はほとんど皆無だった。



 一応、自発的に動くことは出来る。

 周囲の情報を集める事も出来る。

 見聞きした事を記録し、蓄えていく事も出来る。

 それらを分析して処理する能力も。

 だが、言ってしまえばそれだけの能力しかなかった。



 ゴーレムのように作業をさせる事も出来ない。

 ホムンクルスのように、智慧を以て人のように行動する事も出来ない。

 人工精霊のように魔術を行使する事も出来ない。

 ただたんに情報を収集し、それを分析していくくらいの能力しか無かった。



 だが、それを作った魔術師にはそれで十分だった。

 彼女の目的はそれで十分に達成された。



 彼女は世の不均衡をどうにか是正しようとした。

 その為に必要なものを作り出そうとした。

 しかし、それが出来ないのも分かっていた。

 求められる能力が大きすぎて、彼女一人で作成する事は不可能だったからだ。



 もし、それを作ろうとしたら、無限の時間と資材が必要になる。

 求める能力を与えるには、彼女一人で用意できるものだけでは到底足りない。

 また、そんな大それたものを作る能力も彼女にはなかった。

 それは魔術の知識や技術だけではない。

 世の不均衡を是正する為の知識や情報そのものもだ。



 彼女は魔術師であった。

 学者ではない。

 哲学者でもない。

 政治家でも無い。

 技術者でもない。

 平凡に暮らす一般人でもない。

 不均衡を是正するとして、その為に何が必要なのか分かってなかった。



 だから、まずはその情報を集めねばならなかった。

 集めるだけではなく、分析も必要だった。

 その為に費やす労力も資本もなかった。

 あらためてやるには、人間一人の人生は短すぎる。



 そこで、自分で全てを行う事をあきらめた。

 代わりに、自分が死んでも活動し続ける魔術装置を残した。

 自動的に動き回り、情報を集めるように。

 集めた情報をもとに行動出来るように。

 その為に必要と思われる基本的な設定だけをほどこして。



 何はなくとも行動できなければ意味がない。

 その為、最低限の動きが出来るように体を作られた。

 周囲の情報を集められるように感覚器も作られた。

 そうした動きを制御する機構を組み込まれた。

 その全ての目的として、一つの行動指針を与えられて。



 そうして世に放たれた魔術装置。

 それに与えられた基本的な命令。

 それこそが、次の一文だった。

『調和・均衡・中立をもたらすこと』



 かくて、世に災いをもたらす存在が誕生した。

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