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403回 前準備

「さーて、頑張るか」

 ユキヒコが去って行ったあと。

 グゴガ・ルは自分自身にそんなかけ声をかける。

 何をしに行ったのかは分からない。

 だが、何かを為しに行ったユキヒコに負けないように。

 そう思った直後だった。



「よう」

 グゴガ・ルの前にユキヒコが転移してきた。

 先ほど出払ったばかりだと言うのに。

「ただいま」

 のんきにそんな事を言ってくる。

 思わず目が点になる。

 だが、ユキヒコは、

「驚くのは分かるが、とりあえず話をさせてくれ」

 そう言ってグゴガ・ルをなだめようとする。



「…………それで、何がどうなってるんだ?」

 数十秒ほどを用いて落ち着いてから。

 グゴガ・ルはユキヒコに問いかける。

「さっき出ていったばかりだってのに」

「まあ、そうなるわな」

 その反応はもっともだと思いながら苦笑する。

 グゴガ・ルからすれば、本当に先ほどのこと。

 ユキヒコとは違うのだ。



 ただ、グゴガ・ルも伊達に覚醒階梯を上げてるわけではない。

 戻ってきたユキヒコが今までと違う事に気づいている。

 あふれる程の気を感じながら。

「本当に何があったんだ?」

 問わずにはいられない。



「まあ、色々と」

 言いながらユキヒコは、自分の経験や体験を伝えていく。

 記憶をかいつまんで直接頭の中に。

 言葉にする必要がない程早く、それでいて圧倒的な情報量がグゴガ・ルに渡る。

「…………なるほど」

 時間にしてわずか数秒。

 それでグゴガ・ルは全てを知った。



「凄まじいな……」

 それだけ言うのが精一杯だった。

「過去に飛んで、なんか訳の分からないのが出て。

 それからお前の元の世界か?

 そこに戻って…………」

「そう、色々あったんだよ」

「ありすぎだ」

 思わず声が出る。

 そう言いたくなるほどユキヒコのこれまでは長大なものだった。



「話が大きすぎて理解しきれん」

「これでも掻い摘まんだんだけどな」

「それでこれか……」

 いったいどれほどの人生を送ってきたのか。

 想像すらも出来ない。

「それで、何で戻ってきた?」

 あれこれ聞きたい事を省いて、グゴガ・ルは要点を尋ねる。

 わざわざ戻ってきたのだから、何かしら理由があるはずだ。

 それを聞かねばならない。



「なに、大した事じゃない」

 何気なくユキヒコは伝える。

「ゴブリンを別の宇宙につれていこうと思うんだ」

「────はい?」

 何を言ってるのか、すぐには理解出来なかった。



 虚無から様々な宇宙を作れるようになったユキヒコ。

 そのユキヒコは、様々な宇宙を作った。

 そのうちのいくつかは、この世界と同じ環境を持っている。

 この星と似たような星が。



「そこに皆を移動させようと思ってるんだ」

「…………待て待て待て」

 一旦ユキヒコの声を止める。

「ちょっと待て、まだ理解しきれないが。

 つまり、なんだ。

 俺たち全員を引っ越しさせると?」

「そうなるな、簡単に言うと」

「…………」

 絶句するグゴガ・ル。



 それから更に数分。

 ユキヒコの言ってることをなんとか理解する。

 実を言えば理解しきれなかったのだが。

 ユキヒコが必要な情報を頭に直接入力してきた。

 おかげで、言いたいことは頭では理解出来た。

 ただ、心が追いつかない。



 そりゃそうだろう。

 いきなり異世界に転移させると言ってるのだ。

 何を言ってるんだと思うのが普通だ。

 それを実現出来る力を持ってる者が目の前にいても。



 冗談では無く本気で言ってるのがたちが悪い。

 これが絵空事であるならば、冗談として聞き流せるのだろうが。

 残念ながら全て本気で事実である。

 ユキヒコにはそれが出来るだけの力がある。



「だから、一気に行くぞ」

「え?」

「悪い、時間がもったいないから。

 全員まとめて飛ぶぞ」

「な?!」

 おい、待て────そう言おうとした。

 しかし、その次の瞬間、

「…………ほら、ついた」

 グゴガ・ルはそんな台詞を聞く。



 何が起こった、と思った。

 周りを見てみるが、特に変化はない。

 ユキヒコが旅立った後に戻ってきた部屋の中だ。

「……何も変わってないようだが」

「いや、そんな事は無い」

 そう言ってユキヒコは微笑む。

「元いた世界とは別の世界だ。

 転移は終わったぞ」

「…………は?」

 何を言ってるのかさっぱり分からなかった。



「まあ、あれでも見てくれ」

 そう言ってユキヒコは窓の外を指す。

 そこには月が浮かんでいた。

 三つほど。

「え…………?」

 世界に月は二つだけだったはずである。

 それが三つになっていた。

「なんで…………って、もしかして本当に」

「そう、異世界。

 月を三つばかり作っておいた。

 元の世界との違いが分かりやすいように」

 事も無げに言うユキヒコ。

 そんなユキヒコを、グゴガ・ルは呆然と見つめた。



 この日。

 異種族連合、イエル側からは魔族と呼ばれる者達。

 彼らは一斉に異世界に転移した。

 そうと気づく事もなく突然に。

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