402回 創造も消滅も
虚無にて宇宙創造と発展を繰り返す。
それで分かった事もいくつかあった。
虚無とは存在しないというわけではない。
確かに何もないのだが、それは本当に全てが皆無というわけではない。
生命のないものが存在できない。
だが、同時にあらゆるものが生まれる。
既に有るものを作り直すしかない有限の宇宙とは違う。
無限の可能性。
そう言える場所だった。
何も無いけど、あらゆるものを詰め込む事が出来る。
限り無くどこまで詰め込む事が出来る。
そういうものだった。
大事なのは『思い』だった。
そこに働きかける事が出来るなら、何でも形になる。
何でも発生する。
既にあるものの形を変える必要もない。
求めた瞬間に即座に形になっていく。
思うことであらわれる。
何も無いけど、無いからなんにでもなれる。
不可解きわまりないが、実際にそういう事が起こってしまう。
それが虚無だった。
あるいは、形に捕らわれないという事かもしれない。
既にあるものに影響され、その中でしか考えられない。
そういった事から無縁なものだった。
形が無いからどんな形にもなる。
どんなものでも発生する。
素になる何かがある必要もない。
土台になる場所も必要ない。
望めば何でも発生する。
形になっていく。
そして、こうした創造こそが覚醒階梯9段階目。
宇宙すらも創造する事だった。
その事に気づき、実行できる力。
ユキヒコはそこに至った。
ありとあらゆる事が手にとるように分かってしまう。
創造する事も、そして消滅させる事も。
何でも発生させる事が出来る虚無だ。
消滅させる事もたやすい。
そこに浮かぶあらゆるものを対象として。
世界・宇宙は虚無の中に浮かんでるものだ。
そこにあるものは全て虚無から生まれたもの。
虚無に介入できるなら消すことも出来る。
この時点でユキヒコは、イエルも中立・調和・均衡をほざいてた者も瞬時に消滅させる事が出来る。
そういった事を把握するまでに。
いくつかの宇宙を創造し。
それぞれの世界が順調に発展させていった。
ここに至り、ユキヒコは本来の目的へと立ち返っていく。
「ようやくだな」
主観的には何兆どころではない時間を費やし。
数値に置き換える事が困難なほどの労力を費やし。
ユキヒコはとある世界に目を向ける。
自分の大事なものを奪った、憎き敵のいる場所を。




