399回 宇宙とは
「どうしたもんかな」
あらためて困ってしまった。
虚無という存在しない無限の空間( ? )
自分自身は存在できるが、他に何も存在できない場所。
それは分かったのはいい。
しかし、ここで何をどうすればいいのか。
それがさっぱり分からなかった。
「意味はあるんだろうけど」
全く何も意味が無いとは思えなかった。
虚無にも虚無で何らかの意味があるはずだった。
それが分からないから悩む。
「なんなんだここは?」
疑問は解消しない。
自分以外の何も存在しない場所。
何か作ればすぐに消えてしまう場所。
こんな所で何かを得られるとはとても思えなかった。
少なくとも、何かを作れるとはとても思えなかった。
ただ、そんな中にも確かに存在してるものがある。
宇宙だ。
虚無の中にあって、それは確かに存在する。
宇宙、世界と呼ばれるものは。
それは虚無にむしばまれる事無く存在している。
それが何故なのかが分からない。
「どうなってんだよ」
そう思って存在する宇宙を調べてみる。
拡大したユキヒコの能力ならば、それも可能だ。
宇宙がどういったもので成り立ってるのか。
それを調べて、虚無にむしばまれない理由を探っていく。
ただ、どうしても時間がかかってしまう。
出来るとはいっても、簡単な事ではない。
何せ一つの世界、宇宙そのものを解析するのだ。
すぐに終わるようなものではない。
「時間は無限にあるけど……」
それだけは救いだろうか。
既に時間にとらわれる事は無くなった。
だからユキヒコには無限の時間が存在する。
手間はかかるが、どれだけ時間を費やしても問題は無い。
ただ、ひたすらに面倒なだけである。
それでも何もしないでいるよりは、と思って作業を開始する。
虚無と、それに浸食されない世界。
そこに何があるのかを調べていく。
もしかしたら、それが新しい何かに気づくきっかけになるかと思って。
こうして作業に没頭すること幾星霜。
ひたすらに作業をこなしていった。
どれほどの時間が経過したのかすらも分からないまま。
時の流れなど無いのだから、計測する事も出来ない。
ただ、ユキヒコ自身の感覚で、膨大な時間が流れたと感じるだけである。
それは何億年だろうか。
あるいは、何兆年だろうか。
もっと長い時間を費やしたのだろうか。
それだけの時間を費やしても、結果は得られなかった。
宇宙という世界と虚無を隔てるもの。
それがどうしても分からなかった。
何せ、虚無は調べる事が出来ない。
無いものを見つける事など不可能なのだから。
だから行き詰まってしまう。
「ここまでなのか………… ?」
そんな思いにもとらわれる。
何かを得るために色々と手を尽くしてきたが。
しかし、どうにも全てが手詰まりだった。
何をしても、何をやっても上手くいかない。
「どうにもならねえな」
本当に打つ手がなかった。
「なんで宇宙はあるんだよ」
この虚無の中に。
どうして消滅しないのか。
その理由が全く分からなかった。
分かったところで、得られるものがあるとは限らない。
何かを得たとしても、それが何ももたらさないかもしれない。
それでも、今よりも何かに近づけるかもしれない。
そう思っているのだが。
どうしてもそこが解明できない。
ここが限界なのかと思えてくる。
「なんでだ………… ?」
なぜ宇宙は存在しているのか。
なぜ虚無に消されないのか。
そこが分からない。
宇宙と虚無、有と無、その境目が何なのかが分からない。
ある程度の事は解き明かすことが出来た。
宇宙が消えない理由。
宇宙が存在し続ける理由。
それは、ある意味簡単な事だった。
宇宙そのものが生命体。
それが答えだった。
人間や動物とは違った形ではあるが、宇宙も生命体の一種だった。
だから虚無に飲み込まれない。
ユキヒコと同じで虚無に浸食されない。
虚無の中でも散っていく事はない。
それで生き延びる事が出来ている。
調べていてそこまで分かった。
ユキヒコに比べれば大きすぎるが、宇宙も生命体という事で人間と変わらない。
人間という尺度でははかりきれないが、確かにそれは生きていた。
霊魂を持ってるという意味では、間違いなく生命体だった。
中心となってる霊魂をもとに、宇宙は出来上がっている。
そこで更に多くの霊魂が発生していく。
それらが宇宙を支え、より大きく拡大していく。
宇宙自体も成長しているのだ。
ただ、そこで疑問が出てくる。
だとして、その霊魂はどこから来たのか?
何もない虚無でどうして宇宙が発生したのか?
それとも、宇宙から何らかの形で虚無が生まれてるのか?
それが分からなかった。
何もない所から何かが出てくるわけがない。
しかし、それでは霊魂はどこから来たのか?
そこが全く分からない。
「どうなってんだよ」
宇宙というものについて少しは分かった。
しかし、それ以上の事はまだ分からない。
むしろ謎が増えた。




