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397回 虚無

「じゃあ、行くか」

 声を出して気合いを入れて転移をする。

 目標は虚無。

 世界と世界の間にある場所へ。



 そこに行くというのは、本来ならばあり得ない事だ。

 なにせ、何も無い空間なのだから。

 存在を感知する事も出来ない。

 そもそも、存在しないから『虚無』という。



 そこに行くというのが矛盾している。

 無いところにどうやって行くというのか?

 また、空間と便宜上述べたが、これもまた間違っている。

 厳密に言うならば、無いのだから空間なんぞ存在してるわけがない。

 ただ、そのままでは表現しづらいから空間と記したまでだ。



 そんな何もないところに行くという。

 どう考えたっておかしい。

 だが、今のユキヒコならばいける。

 一度どころか二度も通った場所だからだ。



 異世界に転生したという事実。

 その時の記憶。

 それが手助けになる。

 確かにそれはあり、そこを超えることが出来た。

 なぜそうなったのかは分からないが。



 しかし、越える事が出来たのだから、再びいく事も出来るはず。

 そう信じてユキヒコは飛び立っていった。

 帰ってきた元の世界、元の宇宙から。

 最悪の事態が起こった異世界への間に。



 本来なら感知できないもの。

 そこへとユキヒコは向かっていく。

 時空を越えてその先に。

 異世界への転移の要領で、三度目となる虚無へと突入していく。

「それ──── !」

 気合いを入れて。



 それ自体はそれほど難しくはなかった。

 既にやってきた事だからだろう。

 時空と時空の間にある何もない場所。

 虚無へとあっさり到達する。

 気合いを入れてやってきたが、すんなりと成功してしまい拍子抜けする。

「…………こんなんでいいのか?」

 いくら何でも簡単過ぎるだろと思ってしまった。



 しかし、言うほど簡単なものではない。

 普通なら感知出来ないものなのだ。

 それを意識してそこに向かうというのは、本来ならありえない。

 ユキヒコが特別なのである。



 それを検出出来ない、それを知覚出来ない。

 それが有るというのが分からない。

 ほとんどの存在が虚無を知ることは出来ない。

 それを知ることが出来たのは、偶然でも何でも、実体験としてそこに触れたからだろう。

 でなければ、ユキヒコが虚無に至れるわけがない。



 言い換えれば。

 だからたいていの存在がユキヒコの段階にまで至れない。

 覚醒階梯でいうならば、7段階目で止まってしまう。

 それより先は、宇宙と宇宙を渡らねば到達出来ない。



 厳密に言えば、そうと決まってるわけではない。

 別に別の宇宙へと渡らなくても良い。

 どんな方法でもいいから、虚無という存在を感知すること。

 これが出来れば良い。

 そうすれば、更なる覚醒を経る事が出来る。



 とはいえ、そんな方法がそうそうあるわけもなく。

 あるにしても、それを知る事が出来る可能性は低い。

 皆無と言って良いほどにだ。

 だから、事実上不可能と言っても良いだろう。

 ユキヒコのように、覚醒階梯第8段階に至る方が奇跡なのだ。



 そんなユキヒコがやってきた虚無。

 無いはずの存在。

 そこにやってきておぼえたのは、戸惑いだった。

「…………なんだこりゃ?」

 そう言うしかなかった。

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