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390回 君の居た軌跡を探して

(なんで?

 どうして?)

 何度も見て確かめる。

 遅れてやってきた者達の中には、確かにユカがいたはずだった。

 ユキヒコの記憶の中ではそうなっている。

 間違えるわけがない。

 しかし、やってきた者達の中に、ユカはいなかった。

(そんな……)

 見間違いかと思う。

 しかし、間違いはない。

 やってきた一段の中に、ユカはいなかった。



(じゃあ、どこに?)

 慌てて探りを入れていく。

 空間・時間のあらゆる所を。

 それは拡大した能力を持つユキヒコにとっても簡単にこなせるようなものではなかった。

 思ったよりも時間がかかってしまった。

 だが、それでも結果は少しずつ出ていく。

 宇宙の始原から終末までの長き時を縦断し、空間を横断して。

 それではっきりと分かった。

 ユカと呼ばれた存在がどこにもいない事を。



 その後、何度も探してみた。

 思い出せる時代、思い出せる場所全てを。

 地球で見つからなければ、他の星にも意識をのばして。

 自分たちがいた時代にいなければ、他の時代も探した。

 しかし、どこにもユカはいなかった。

 その痕跡もなかった。



(まさか……)

 確かに霊魂は吸収した。

 ユキヒコが自らの手で消し去った。

 今後、転生などで再び出現することはない。

 それは分かってる。

 それは覚悟していた。

 だが、過去にも姿が見えないのはどういう事なのか分からなかった。

(おいおい、どうなってんだよ)

 慌てて頭を働かせていく。

 考え得る可能性を全て網羅していく。

 その中で現在の状況に最も近い事を推測していく。

 更に、宇宙や時間の在り方なども精査していく。



 出てきた結果は意外なものだった。

 霊魂の吸収、存在の消滅。

 それは消滅した時点から未来において消えるというだけではない。

 過去にまで遡って、存在していたという事実そのものが消える。

 かろうじてユキヒコの中には記憶が残っているが、それ以外からは存在した痕跡そのものが消えている。

 空間からも、時間からも。



 これはユキヒコの思考の結果や推理の中だけでの事ではない。

 ユキヒコが探った宇宙全体でそうなっている。

 もしかしたら何かしらの見落としがあるかもしれないが、現時点ではユカの消滅を否定する材料は無い。

 本当に消えたのだ。

 この宇宙から。

 そして、他の宇宙からも。

 永遠に。



「そっか……」

 言葉が漏れる。

「もう、いないのか」

 そうなる事は分かっていた。

 しかし、それは思ったよりも大事になっていた。



 霊魂の消滅と共に、過去や未来からも存在の痕跡が消えた。

 本当に存在ごと消えている。

 何も残ってない。

 何もかも消えてしまった。

 …………その事実が、ユキヒコに衝撃を与えていった。



 しばらくはそのまま何も考えられなくなってしまった。

 まさかこうなるとは思ってもいなかったのだ。

 過去を探ればそこにユカがいる。

 なんとなくそう思っていた。

 時間の流れは過去から未来への一方通行で、現在や未来は過去を変えられない。

 そう思っていたのだ。

 しかし、どうやらそうではないらしい。



「そっか、いないのか」

 本当にいない。

 どこにもいない。

 探しても見つからない。

 だから、おそらくは消滅したのだろう。

 そうはっきりと知って、不思議と納得してしまう。

 そういうものなのだと。



 それが辛いという気持ちはある。

 共に過ごしてきた存在だ。

 いなくなれば、やはり切なさはある。

 だが、それだけでないのも確かだった。

 辛いは辛いが、それでもなぜかすっきりしてる部分もあった。

 最も近い感覚を言い表すなら、開放感。

 それだけではないが、そう言うのが一番近いのかもしれない。

 ただ、それは決して爽快なものではなかった。

 隙間風が入り込むようなむなしさがどこかにあった。

 重荷がなくなったというより、大事なよりどころを失ったような。

 大事な絆を失ったような。

 むしろ、喪失感といったほうがより正解に近いのかもしれない。

 そんな感情が浮かんできた。



 しかし、悲しいという思いはさほどない。

 こうなってしまったか、とは思う。

 それもやむをえない、と妙に納得してしまっている。

 それを受け入れてしまっている。

「本当に…………全部無くしちまったんだな」

 言葉にして、あらためてこの事態を実感した。

 ここに来て、ようやく理解した。

 そういった事を諸々含めて、ユキヒコは一言でそれを整理する。



「まあ…………しょーがないか」



 何の気なしに放つような、軽い声。

 意外なほど軽い調子。

 そんな自分にユキヒコも軽く驚いていく。

 だが、こうなってようやく自分は向き合う事が出来るんだとも思った。

 あらゆる事に。

 これからに。



 失ったこと。

 奪われたこと。

 それとようやく向き合えたのは、この瞬間なのかもしれない。

 どういう形なのかは分からないままながらも、吹っ切れたのかもしれない。

 ユカがそうしたように。

 ユキヒコもユカを過去にした。

 今ここで、そうする事が出来た。



 奪われてからずっと、気にしていた。

 心の底から望んでいた。

 執着かもしれない。

 わだかまりと言っても良かったのかもしれない。

 とにかく、ユカが全てだった。

 それだけを考えていた。

 奪われた時から。

 もう自分のものではなくなった時から。

 そして、それらに(最善でないにせよ)決着をつけた瞬間から。

 なんだかんだでユカがそこにはいた。

 それをきにしていた。

 それからようやく解放された……ような気がした。



 だからこそ、何にもとらわれる事がなくなったような気がした。

 だからこそ、何かを気にする事も無くなったような気がした。

 だからこそ、何の躊躇いもなく何でもやってしまえそうな気がした。

 守るべき道義や、

 道や、

 法や、

 大切にせねばならない事など関係なく。



「さーて」

 晴れ晴れとした声が出る。



「やるか」

 決意を口にする。



 力みもてらいもなく、ただあるがままに。

 思うがままに。

 この先に目を向けていける。



 喪心のままに。

今後だけど。

しばらく冒頭部分の修正に突入する。

少し直すつもりが、少しで終わらなくなった。

少し削ったり足したりするだけでいいと思っていたのだが。

もう全面改訂したくなるほど酷い。

今見直すと、こんなに酷かったのかと唖然とする。

ここまで読んでくれてる人がいるのが奇跡だ。


というわけで、少しだけでも良くしたいので、色々変えてくる。

もう色々と手遅れなのかもしれんが。


というか、ここ最近の更新で更に多くの人がこの話を切ってるんじゃないかと。

そこは自業自得なんでしょうがない。

諦めることにする。


でも、こんなんでも楽しい・面白い、そうでなくても続きが気になると思ってくれる人がいると信じておきたい。

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