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39回 聖戦士と聖戦団────拡大した能力、その効果

 直観的にこうした方がいい、という思い。

 それを抱いたのはいつの頃だったか。

 はっきりとおぼえるようになったのは義勇兵になってからか。

 その感覚によって救われた事は何度かある。



 思い通りに操れるものではない。

 時折、唐突にその感覚はやってくる。

 意識してその感覚を使う事は出来ない。

 そこまで都合の良い能力ではない。

 なので頼りにするわけにもいかない。



 しかし、それは確かにある。

 これまで、ユキヒコの行く先を示してくれていた。

 言うならば予兆や兆候というものだろうか。

 気や気配の流れに近いものがあるように感じられた。



 それが来るとユキヒコは、はっきりと分かるのだ。

 何が起こり、どうなるのかが。

 誰がどういう風に動くのかも。

 これらを踏まえて、何をどうすればいいのかが分かる事があった。

 それは原因や経緯、対処のための理論や理屈などは示さない。

 それらを飛び越して結果だけを伝えてくる。



 不思議な事に、それでいて妙な説得力があった。

 必ずこうなるという。

 だから、それに素直に従う事にしていった。

 おかげで何度も命拾いをしている。



 もちろん、本当にそうなるのか、という思いも抱いた。

 もしかしたら、思い過ごしなのかもと。

 なので試しに予感や予兆とは逆の行動を取ったりもした。

 それで結果がどうなるのかを見たりも。

 答えは明らかだった。

『予感や予兆は正しい』

『それには従った方が良い』



 逆らって良い結果になる事はほとんどなかった。

 一時的に良い結果になっても、それは長続きしない。

 その後、より悲惨な問題となって還ってくるのがほとんどだった。

 そして予兆に従って動けば、悪くなるような事はまずなかった。

 結果として命を拾うような事もあった。

 よりよい成果を成し遂げる事にも繋がった。



 今回、その予兆や予感があった。

 だから拠点に立て籠もる事を選んだ。

 それが最善だという確信があった。

 もちろん、その理由などについては分からない。

 どうしてそうなるのか、筋道だって説明することは無理だ。

 だが、そうした方が良いというのは確かに感じる事が出来た。



(それでも駄目なら、そこまでだ)

 開き直ったりもしている。

 本当に直観通りに物事が動くのかは分からない。

 もしかしたら今回は外れるかもしれない。

 最悪の終わり方をするかもしれない。

 だとしても、それを受け入れるつもりでいた。



 既に事は進んでるのだ。

 今更どうにもならない。

 あとは結果が出るまでやれる事をやるしかない。

 やるべきでない事は控えるしかない。

 それをどうしていくかは、ユキヒコの意志や考えで決めていくしかない。



(なるようになる、それだけだ)

 結果がどうなるかなんて分からない。

 未来を見る事が出来るならともかく。

 出来るのは、今この瞬間に全身全霊をそそぐだけだ。

 結果については、野となれ山となれ……だった。



 それくらい開き直ってないとやってられない。

 危険な賭けに出てるのだから。

 そんな危険を避けても通れない。

 楽が出来る状況では無いのだから。



 そんなユキヒコの思惑をよそに、聖戦団は動いていく。

 拠点に入っていった数人を見送り、結果を待つ。

 その間に門の付近にも援護の人員を配置する。

 それを本隊は離れた所で見ていた。



 本隊を安全圏に置き、危険な所には少数の偵察隊を送る。

 特に目新しい所のない、平凡なやり方である。

 損害を最小に減らし、成果をあげるためのありふれた手段。

 使い古されたものだ。

 つまり、それだけ長く用いられてる有効な手段である。



 それだけにユキヒコからすれば歯がゆい。

 この状態で襲いかかっても、成果はさほど得られない。

 拠点内に侵入して来た連中を倒して終わりである。

 出来れば敵をもう少し果敢に侵入してきてもらいたかった。

 その方が敵を減らせる。

 悔しいがそれは出来そうも無かった。



(一旦、中の様子を知らせに行かせるか?)

 内部の様子を伝える事で、相手に安心感を抱かせる。

 誰もいないとなれば、危険とは思わない可能性がある。

 そうなれば、全員で内部調査にやってくるかも。



 しかし、そうなるとは限らない。

 拠点との連絡が途絶して時間が経っている。

 その調査にやってきてるなら、十分すぎるほどに警戒してるだろう。

 だとすれば、慎重を期して一旦撤退するかもしれない。



 この場合、拠点内部が静かなのが問題になる。

 敵がいないのは良いが、味方もいないとなれば警戒するだろう。

 それは十分に異常事態である。

 そんな所にわざわざ踏み込んでくるとは思えない。

 余程勇敢であるか、凄まじい馬鹿でない限り。



 もし聖戦団の指揮官がまともだったら、ここで無理はしない。

 受けてる指示や指令にもよるが、この異常事態の情報だけ持ち帰るだろう。

 誰も居ないという異常な状態を確認したのだ。

 長居をする必要は無い。

 これがユキヒコにとって、もっともなってほしくない動きだった。



 そうなった時の事も考えて、備えはしてある。

 それが上手くいけば、敵を一網打尽に出来るだろう。

 幸い、数はゴブリン達の方がはるかに優勢だ。

 上手く仕掛ける事が出来れば、敵を殲滅する事も出来る。



 だが、それは上手くいかなかった時の備えだ。

 出来ればそれを用いる事態にはならないで欲しかった。

 敵を討ち漏らす可能性が出てくる。

 それよりは、拠点内部に誘い込んだ方がまだマシだった。



 それでも、どちらに転んでも言いように対応はしていく。

 敵が入ってくるならそれで良し。

 そうせずに撤退するなら、それも良し。

(上手くいってくれよ)

 そう願いながら、推移を見つめていく。



 拠点内部を探索する聖戦団。

 その動きをユキヒコは感知していた。

 気の発生源をたどる事で。

 そして、その姿もとらえていた。

 望遠出来るようになった目で。

 彼らの息づかいすらも耳にとらえている。

 遠くの音まで拾えるようになった耳で。



 ここ最近になって、ユキヒコの能力は拡大していた。

 気の流れが見えるだけではない。

 ある程度離れていてもそれを検出できるようになっていた。

 また、目や耳といった五感の感度も上げる事が出来るようになっていた。

 これにより目は望遠鏡のように遠くまで。

 耳は集音器のように遠くの音を。

 匂いも肌に触れる感触も、口に入る空気の味すらも。

 以前より明敏に感じられるようになっていた。



 この能力を使って、敵の位置を把握していく。

 聖戦団の連中がどう動き、何を話してるのかを。

 それは拠点内だけではない。

 外で控えてる敵の本隊もだ。

 今のユキヒコには、様々な事が筒抜けになっている。

 それにより様々な情報を収集していく。

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