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384回 彼らの考えはこういったもので、これを受け入れる事はとても出来なかった

 イエルの生まれ育った教団の教義とは、ある種の独善性に彩られていた。

 それを一言で言い表すのは難しい。

 しかし、それを言葉にするなら次のようになるだろうか。



 助け合いといって、相手から奪う。

 教団にとって助け合いとは、他者から何かを得る事を指す。

 教団の者達が何かを助けるという事はない。

 ただ、助けてと求め、その見返りはない。

 一方的に相手に負担をかけるだけだ。

 何一つ助け合ってはいない。



 平等といって、他人を引きずりおとす。

 それが生まれによるものであろうと、努力によって成し遂げたものであろうと関係がない。

 王侯貴族であろうと成り上がりであろうと、そういった栄達を認めない。

 そうして得たものは全て不当なものとして、彼らのもつものを奪おうとする。

 あるいは騙して奪おうとする。

 そして、相手を自分たちと同じところまで引きずり下ろそうとする。



 博愛といって、自分たちへの批難を糾弾する。

 たとえ悪事を働いて処罰を受けるにしても、それを寛容をもって許すよう強請する。

 あるいは、なだめすかして。

 あるいは、涙ながらに訴えて。

 本来、悪事を働く、つまりは他者を害した故に処断・処罰されてるのにだ。

 そうやって悪事を働いた者をのさばらせ、被害者への補填などもさせない。

 犯罪者にとっての天国を作り出していく。



 自由といって、自分たちの横暴を正当化する。

 自由とは他者の自由、他者の欲望、他者の尊厳なども認めてようやく成り立つものだ。

 しかし、教団の者達はそんな事はしない。

 せいぜい、教団員同士では多少は尊重するくらいだろう。

 それ以外の者達への横暴は、全て一人一人の自由、そして尊厳によるものとする。

 それを抑止して安心と安全を守ろうとすれば、それは悪事だと罵る。



 これが教団のやってる事である。

 ようするに、自分たちの都合を正義と騙り、他者を排除して貶めている。

 あまりにも利己的なその考えや態度が受け入れられるわけがない。

 そんな奴らだから糾弾されている。



 過去にやってくるにあたり、イエルについて調べていてこういった事を知った。

 相手の事を少しでも知ろうとしてだ。

 様々な場所や時代にあった出来事や記録に記憶を可能な限りあさった。

 そうして出てきたのが、こういった受け入れる事も認める事も出来ないようなものだった。


 ようするに、この教団は自分たちの好き勝手を押し通したいだけなのだ。

 そういった考えが教義になっており、それに協調出来る者が集まっている。

 それを押し通す時には傲慢さと勤勉さを発揮する。

 しかしその本質は、自分では何もせず、他者から何かを奪う事で生活したいという欲求。

 怠惰と傲慢というのは、こうしたところからくるものだ。



 こういった連中だけに、共に生きていく事は不可能だった。

 共に生きるというのは、何らかの形で協力して行くことになる。

 そして、協力とは自立した者同士の間でしか成り立たない。

 なにをもって自立とするかは難しいが、とりあえず何かしら産出するといった事になるだろうか。

 それは食料だったり、労働だったり、作成だったり、商いだったりと様々だ。

 一言で言えるようなものではない。

 だが、基本的に怠惰な教団の者達がこんな事をするわけがない。



 他から何も得られない場合は仕方なく働く事もあるだろう。

 しかし、他に誰かいるならそこから何かを奪おうとする。

 それが乞食であろうと強奪であろうと詐取であろうと、手段は様々だ。

 そんな事に労力を費やすくらいなら、何かしら働けば良いのだが。

 彼らの思考というのは、そういった方向には動かない。

 実に不可解な事である。



 楽をするのとも違う。

 楽とは、働く中で無駄をなくし不要な力を抜くことであろう。

 また、するべき事をなしてから得るものであろう。

 するべき事を楽しくおこなう、というのもある。

 だが、教団にこういったものはない。

 あるのは、どこまでも怠けようという魂胆だ。

 それは楽を求めるのとは似てるようで全く違った何かである。



 寄生。

 こうした働かない、奪おうとしてくる者達の行動を言うなら、これになるだろう。

 これが無用な負担を生み出す事になる。

 むしろ、こういった者達の存在は障害にしかならないだろう。

 無為徒食の輩を養う義理や義務は誰にも無い。

 それでも付きまとってくるなら、たたき出すのが真っ当な対応になる。



 なぜなら、こういった者達に差し出す分を別の所に振り分けた方が効果的だからだ。

 それは自分自身であったり、自分の家族であったり。

 自分の大事な人であったり、自分と協力出来る者であったり。

 あるいは有益な何か提供してくれる誰かであったり。

 将来に備えて蓄えておく、というのも使い方の一つだろう。

 こういった事で、豊かに生きたり、家族を養ったりする事が出来る。

 それをふいにしてまで、どうして寄生してくる者を養わねばならないのか?



 そして、この教団は勢力を拡大し巨大化した時にとある行動に出る。

 他人からの搾取を望むこの連中は、他の者達を奴隷化していった。

 自分たちの生命と生活を支えるために。

 寄生もつきつめればそんな形になるらしい。

 ある意味、寄生の一形態ではあるのだろう。

 自分で何かをする事なく、他者から奪うという事に変わりはないのだから。



 そういった者達による教団。

 そういった者達が作る集落。

 そんな所で生まれ育てば、よほど素質が優れてなければ問題に気づく事もないだろう。

 気づいても、環境や状況を変える事は不可能に近いだろう。

 大半の者が、その環境に染まっていく。

 特別おかしな事ではない、それが人間というものだ。



 それでも、外に出れば異常に気づく事もあるかもしれない。

 しかし、その機会が少ない場所でもある。

 そもそも、追い出された者達の集落である。

 そんな所から来る者を好んで迎える者はほとんどいない。



 それでも、ここはおかしい、出ていきたいというならまだマシである。

 最悪なのは、こういった環境、こういった考えを無理なく受け入れる者である。

 それどころか、こういった考えを最善最良と心か信じる者だ。

 もって生まれた素質や素養が、こういった考えと同等な人間と言うべきかもしれない。

 そういった者はこういった状況をより強化していき、成長させてしまうかもしれない。



 イエルとはそういった者なのかもしれない。

 だからこの小さな集落を発展させていき、後に世界の中でも大きな勢力としていったのだろう。

 そうなる前に手を打たねばならない。

「……さっさと滅んでくれ」

 そこにいるのがそもそもの間違いとしか思えない連中。

 それらを一瞬にして滅亡させようと、ユキヒコは力を発動させていった。



 その瞬間。

 世界が一転した。

 景色が変わる。

 ユキヒコが周囲から隔離されていく。

 それはユキヒコにも感知出来ていた。

 とてつもなく大きな力を。



(なんだ?!)

 そう思って周囲の様子を探知する。

 何がいるのか、何が動いてるのか。

 この現象を起こしてる力はなんなのか。

 そういった事を探る為に。

 しかし、結果がでるより先に相手の方が語りかけてくる。

「そこまでだ」

冒頭部分を書き直している。

1~6回目は書き換えた。


これで少しは読みやすくなってりゃいいんだが。

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