382回 女神と僭称される魔女、それが生まれた環境
後に女神に、あるいは魔女となるイエル。
それがそうなるには、当然ながらそうなるだけの理由がある。
まずもって、持ってうまれた素質や素養、人格があるのは間違いない。
それが基本になって後の魔女/女神イエルの誕生に向かっていく。
しかし、それだけで全てがなしえたわけではない。
当然ながらそこには、生活環境なども関わってくる。
この環境もまた問題だった。
イエル自身にも多大な問題があっただろう。
しかし、それに拍車をかけたのは環境である。
彼女が生まれ育った所は、ある意味最悪と言ってよいところだった。
当時の彼女は、とある宗教を崇拝している集落に生まれた。
語弊はあるが、分かりやすくいえばカルト団体と言ってよいだろうか。
それも、教えに極端に従順な者達が集まって作っていた集団だった。
狂信者や原理主義といっても良いかもしれない。
教条的とも言うのだろうか。
とにかく、現実を無視して経典や教えを盲信する傾向があった。
それはもう、『妄信』と言うのがふさわしいようなものだった。
そんなものが周囲にある所で生まれ育ったのだ。
まともな人間でも何かが狂う。
そんな環境がイエルに合っていたのだろう。
彼女はこの教団集落の中で頭角を現していく。
ユキヒコが破壊せねばならないのは、この教団そのものである。
これが後に教会となって各地に教義を伝染させていく。
それも含めて、教団を破壊せねばならなかった。
教義や経典も含めて。
そうしておかないと、再びイエルのような輩があらわれる可能性がある。
そうなる可能性は徹底的に潰しておかねばならない。
後の災いを考えれば、これくらいの処置は当然である。
なので、教団集落そのものを壊滅させねばならない。
誰一人、何一つ残さないように。
ただ、それはそれで多少手間がかかる。
教団の人間の大半は集落にいる。
なのだが、そこにだけいるわけではない。
教団の崇拝する宗教とその教義に感染してる人間は他にもいる。
それらは普段は自分の崇拝してる宗教を隠して生きている。
それが集落以外にも結構散らばっていた。
こういったものも根絶やしにしないといけない。
ユキヒコの能力があれば、やれない事はない。
ただ、手間がかかるのは確かだ。
「面倒だな」
ぼやきと共にため息を吐く。
「どこまでも祟る奴らだ……」
ぼやきつつもユキヒコは教団の集落の前に出る。
まずは全ての中心地たる場所。
ここを破壊しなくてはいけない。
ここから全ての問題が放たれてるのだから。




