370回 再会のち、蹂躙 8
「なんで……」
ユキヒコに向けてか細い声(というよりは、そういった気持ちといった方がよいだろう)が届く。
「なんでこんな事するのよ」
その発信源に目を向けるユキヒコは、これ以上ないくらい冷めた、そして醒めた目で相手を見つめた。
「あんまりじゃない……こんなのってないよ」
「お前が言うか、それを?」
言い放つ相手に、自分でも驚くほど平坦で冷淡な声が出た。
「むしろ聞きたいんだが、なんでこうならないと思ってるんだ、ユカ?」
尋ねるユキヒコに返事は無い。
ただ、涙をたたえ、そしてこぼれ落ちる瞳が向けられるだけである。
そんなユカを見て、
「…………答えが無いなら、変なこと言うな」
そう言って足を振る。
寝転がっていたユカの顎をとらえ、頭をほどよく吹き飛ばす。
衝撃を受けた頭は意識を飛ばしそうになった。
そうならないようにユキヒコは、意識を飛ばさないよう体調をととのえてやる。
「簡単に壊れようとしてるんじゃないよ」
いいながら髪の毛を掴み、そのまま持ち上げる。
ユカと視線の高さを合わせ、相手の目を見つめる。
「……まだまだこれからだからな」
そう言うユキヒコに、ユカは何も答えられなかった。
痛みのせいだけではない。
瞳の温度があまりにも冷たく、それでいて強い意志をやどしたそれに心を凍えさせられたからだ。
そんなユカを捕まえたまま、ユキヒコは他の勇者と聖女達に告げる。
「さあ、宴会だ。
派手にやろうぜ。
お前らがそこの屑と毎晩やってたようにな」
そこからは一方的な蹂躙であった。
抵抗が出来ない聖女達に、ユキヒコが襲いかかっていく。
暴行とは別の形で。
ある意味、暴行よりも酷い行為を。
それを見て勇者は目を見開き、声をあげていった。
聖女達も次々に悲鳴をあげていく。
だが、当然ながらユキヒコが止まる事は無い。
「やめろおおおおおおおおおおおおお!」
勇者の悲鳴と絶叫が続く
「なんで、こんな……ことを」
問いかけに答えがあるわけもなく。
「この魔族が!」
糾弾、あるいは侮蔑も意味をなさない。
それらがユキヒコを止める事は無い。
目の前で行われている陵辱。
それは止まる事無く続行されていく。
勇者が大事にしてきた者達を対象にして。
それに泣き叫び続ける勇者と聖女達。
そんな彼らにユキヒコは疑問をぶつける。
「なに言ってんだおまえら?」
「初めてじゃないだろ」
まず最初にそう言った。
「こんな事するのは。
いまさら回数が増えたところでわめくな」
そういう問題じゃない、という抗議の叫びがあがってくる。
それを無視して更に、
「だいたい、他の奴とやるなんて別にどうってこと無いだろ。
なに文句言ってんだ?
おまえら、イエルの下僕だろうが」
勇者と聖女からすれば意味の分からない。
しかし、ユキヒコからすれば当たり前の事を口にしていく。




