356回 久しぶりの故郷、醜い思い出、あふれる憎悪 7
村長に限った事ではないが、なぜか自分のやった事が自分に返ってくることを考えない者がいる。
己は何をしてもいいという特権を得てると誤解してる連中が。
確かに王族や貴族などにはそういった特権があるだろう。
それは彼らがせねばならぬ統治という仕事の為に必要ではあるのだろう。
だが、そこを誤解して特権が当然のもので、自然の法則であるかのように考える愚か者というものが出てきてしまう。
そんな特権すらも、彼らが使える権力があっての事なのを忘れ。
とどのつまり、それはいかに暴力を動員できるか、という事になる。
あらゆる横暴を押し通すのは、相手を押さえつける力があるかどうかにかかっている。
道義や倫理をといても、そんなの結局は後付けの屁理屈でしかない。
警察にしろ軍隊にしろ、裏社会にしろ、それらを使えるからこそ対抗する事をためらうだけだ。
だからこそ、それ以上の暴力である革命によって特権は覆される。
今、村長達もそういった状況に陥っている。
かつては教会の、村の総意という力でユキヒコを押さえつけた。
それに対抗するだけの力がないから、ユキヒコはかすかな可能性にかけるしかなかった。
そして今、その力関係は覆されている。
ならばユキヒコの行動を止める事は出来ない。
社会というものによる圧迫を跳ね返すだけの力がユキヒコにはあるのだから。
その事を村長は、村の重鎮達は理解出来なかった。
力の強弱も。
動員できる人数(兵力)も。
社会というより大きな力や背景も。
その全てにおいてユキヒコは彼らを上回っている。
「まあ、理解できないだろうけど」
そんな事を村長達に理解させるつもりはなかった。
理解してもらいたいとは思うが、それは無理だろうと思っていた。
それを理解できるだけの地頭の良さがない。
それを理解するだけの教養も培ってない。
それを受け入れるだけの心構えもない。
ただ、己の領分と己の考えに固執し、己の都合を正義と言い張るだけの強硬さだけしか持たない連中である。
反省させるからこそ出てくる後悔など期待する事は出来ない。
「だから、さっさと養分になってくれ」
せめてそれくらいはしてやらないと気が済まなかった。
二度と復活しない。
転生など出来はしない。
ただただすりつぶされ、己という存在を消化され吸収されていく。
己がいたという軌跡や痕跡はどこかに残るにしてもだ。
この先も霊魂という形で存在し続ける事は出来なくなる。
かつて他人を踏みにじり、自分たちの栄達の為の養分にした。
だから今度は、
「お前らが養分になれ」
他の誰かの都合によって。
自分の意思や思いを全て蹂躙されて。
培った全てを否定されながら。
「お前らの作ったこの村も。
お前らの血筋も。
お前らと関わった連中も。
全て消滅させてやる」
せめてそれくらいはやり返さないと気が済まない。




