354回 久しぶりの故郷、醜い思い出、あふれる憎悪 5
そもそもとして変化を求めてどうするのか。
そんな事をしても何の意味もない。
やらかした事が変わるわけではないのだから。
また、変わるにしろ変えるにしろ、出来もしない事に注ぎ込む労力や時間が無駄になる。
そういう連中に求めるのは賠償だけである。
やらかした事の穴埋め。
それですら行った事が無くなるわけではないが、少しくらいは補填になるだろう。
ユキヒコが求めてるのはそれだけだった。
今更過去が変わるわけではない。
やらかした事が覆るわけではない。
そして、目の前にいる連中は今後も同じ事を繰り返す。
同じような状況になれば何度でも。
そして問題と過ちを繰り返していく。
そんな奴らを放置しておくつもりはない。
何より、ユカを奪われた恨みがある。
教会が絡んでるから仕方がない。
世の中が、社会そのものがそうなってるから仕方がない。
そういった事も分からないではない。
だが、ユキヒコが受け入れる理由にはならない。
その瞬間にユキヒコの全てが踏みにじられたのだ。
恨んで当然だろう。
それを否定するのは心ない人間だけである。
「──それじゃ、始めるぞ」
叩きのめし、いたぶりつくし、それでもまだ足りない。
地面に伏せる村長達を前に、まだユキヒコは憤懣やるかたない思いを抱いている。
だが、溜飲が下がるまでこんな事を繰り返してる訳にもいかない。
時間には限りがある。
「お前ら全員、餌だ」
そう言ってユキヒコは能力を使った。
霊魂の吸収、エナジードレインを。
高まった能力は、こんな事すら可能としていた。
村人達から霊魂が抜かれていく。
それとともに体が干からびていく。
生気の全てを奪われていく。
赤子から老人まで全員平等に。
「う……ああ……」
悲鳴が上がっていく。
「やめ……ろ……」
「助けて……」
応じるもののない声がそこらから出てくる。
「助けて……くれ」
そういう者の中には、ユキヒコの見知った者もいた。
友人知人、家族など。
だが、一切の容赦なくユキヒコは霊魂を吸い出していく。
「ユキヒコくん……」
「やめて……」
そう言ってくる者に目を向ければ、それは家族と同じくらいに馴染みのある連中だった。
「────ひさしぶりです、おじさん、おばさん」
ユカの両親。
そして、その家族。
それらもそこに転がっていた。
助けを求めてすがってくる。
そんな彼らに、
「安心してくれ」
容赦なく告げていく。
「ユカも同じようにするから」
それが彼らにかける最後の言葉だった。
そうして抜き出された霊魂を、連れてきた者達に分けていく。
グゴガ・ルに、ソウスケに、邪神官に、イビルエルフに。
そうする事で彼らの能力は飛躍的に上がっていく。
覚醒階梯すらも上がるほどに。
「これは……」
「相変わらず凄いな」
吸収した霊魂が力になっていく。
能力値が跳ね上がる。
そして、今まで見えてなかった気の流れも。
邪神官とイビルエルフはその瞬間に覚醒階梯が上がっていく。
目に見えたものを瞬時に理解して。
グゴガ・ルとソウスケは言わずもがな。
人々の霊魂を吸収して四人の力は拡大し増大していく。




