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353回 久しぶりの故郷、醜い思い出、あふれる憎悪 4

「相変わらずだな」

 苦行と苦悶を繰り返した村長は、手足を折られた状態で寝転がっている。

 荒く息をついているその姿はどう控えめに言っても無事とは言えない。

 そんな村長を見て、他の村人達も押し黙る。

 下手なことを言えばどうなるのかが分かったので。

 そんな村長と村人にユキヒコは、

「自分の事しか考えない」

 忌々しげに声をあげる。

「昔のままだな、偉そうな態度は」

 言いながら足を踏みにじる。

 折れた部分を刺激されて村長は悲鳴をあげる。

「少しは態度を考えろ」

 そう言って折れた部分を破壊し、治し、それからまた折る。



「何を言ってる!」

 村長はそれでもまだユキヒコに楯突いていく。

「お前は何をしてるのか……」

 言葉は途中で吹き飛ばされた。

 動いていた顎と共に。

 頭をのけぞらせた村長は、意識もいくらか飛ばしていった。

 それを見て、

「本当に何も分かってねえな」

 ユキヒコは苛立ちを更に募らせていった。



 それからしばらく、ユキヒコは村長をサンドバックにしていった。

 これまでの恨み辛みを晴らすべく。

 それは村の重鎮なども同じだ。

 村長と同じく何度も叩きのめし、治し、叩き潰していく。

 何年もため込んだ思いを晴らすために。

 この程度で憂さが晴れるわけではないが、やらなければ今後も憤りを残す事になる。

 出来るだけ徹底的に痛めつけねば気が済まない。



「受け入れろよ、これくらい」

 思い出すのは数年前。

 ユカが連れ去られてゆく時に聞かされた言葉。

「しょうがないよなあ。

 こういう事になっちまったんだからなあ」

 状況が状況だから。

 仕方のない事だから。

 そう言って煮え湯を飲まされた。

 それを強いたのだから、自分たちが同じ立場になっても文句は無いはずである。

「手前えらは潰す。

 手前えらだけじゃなく、他の連中も潰す」

 くつがえしようのない決定事項である。

「俺の女を売女に仕立て上げたんだ。

 俺から引き剥がしたんだ。

 お前らだって同じように痛い目みるのも当然だよなあ」

 誰かに何かを強制した。

 ならば、同じように何かを強制されるのに文句は無いはず。

 あるなら、他人に何かを押しつけてはいけない。

 そんな単純な話である。



 ただ、そんな単純な事が村長達には理解が出来なかった。

 彼らからすれば、教会に従っただけである。

 神と崇拝するイエルに従っただけである。

 その結果、誰かに何かを強いる事になっても、それが問題だとは思っていない。

 彼らにとって、中心となってるイエルの意向が全てであるだけだ。

 それに逆らうという発想がない。

 そんな考えは異常としか思わない。

 それは奴隷の思考であろう

 主が全てで、それに従うのが正解という。

 そんな者達に、一人一人を尊重するという発想などあるわけがない。

 なので、ユキヒコに加えられてる責め苦は理不尽な虐待としか思えなかった。



 そんな考えであるのは、ユキヒコにもとっくに分かってる。

 どこまで言っても理解し合えないと。

 それをただすつもりもなかった。

 時間と労力の無駄でしかない。

 人は持って生まれた性分のまま生きていく。

 成長して変わるという事もない。

 そんなもの幻想でしかない。

 そこに新たな何かを加えるという事もない。

 知識や情報はともかく、本性の部分というのはそのままだ。

 この村長達もそれは同じだ。

 決して変わる事は無い。

 今もユカを教会に売った事を問題だとは思ってない。

 むしろ、快挙を成し遂げたと思っている。

 そんな連中に反省を求めても無駄だ。

本日はここまで。

続きは明日。


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