349回 久しぶりに見る顔、それらと共に次の目的、そして前準備へ 2
「それで、話は本当なのか?」
全員を代表するように邪神官が尋ねてくる。
その顔は幾分こわばってるようにも、つまりは素の表情になっていた。
それだけ真剣という事なのだろう。
呼ばれた理由はそうなるだけの内容だった。
本気でやるのか、間違いは無いのかと問いただしたくなるような。
その為、集まった四人全員が真意を問うような顔をしている。
ユキヒコはそんな彼らに、
「もちろん」
何の気なしというような、いたって軽い調子で応えた。
「冗談で言うような内容じゃないからな」
「そうか」
それで邪神官は納得したようだった。
たった一言であるが、相手の真意を確かめるには十分である。
ユキヒコはくだらない冗談を言うような人間では無い。
また、つまらない事で忙しい人間を引きずりまわすような者でもない。
やると行ったからにはやるのだろう。
それが分かっただけで十分である。
それでも、
「しかし、いいのか?」
心配したような調子でグゴガ・ルが尋ねる。
「さすがにこれは……」
「いいんだよ」
何かを言おうとするゴブリンをユキヒコは制す。
「決めた事だ。
前々からな。
ようやく、それをやる機会が出来た」
事実である。
今までやらなかったのは時期を見ていたからだ。
自分自身の実力の事もある。
それが出来る機会をうかがっていた。
今回、それを実行する条件がととのった。
だから行動にうつしている。
「やめろって行っても止まるつもりはない」
「そうか」
それでグゴガ・ルも納得した。
「いや、すまん。
さすがに事が事なんでな。
後悔が残るような事にならなきゃいいと思って」
「気遣いありがとう」
皮肉でも何でもなく、本心からそう思う。
長い付き合いになったこのゴブリンの思いやりがありがたい。
「けど、いいんだ。
奴らにはいつか必ずやってやろうと思ってたから」
その言葉に全員無言になる。
人として、それは止めるべきなのだろうとは思う。
しかし、人であるからこそそれを止めてはいけないとも思う。
「なら、行こう」
邪神官が口火を切る。
「やらねばならん事なのだろうからな」
「ご相伴にあずかれるなら喜ぶべきだろうしな」
イビルエルフも続く。
ソウスケも、
「気持ちはよく分かるしね」
と述べる。
この中でもっともユキヒコに似た境遇であるだけに、下手に止めたりはしなかった。
「やりたいようにやってくれ。
その方がいい。
俺はそうだったから」
「ああ、そのつもりだ」
迷いの無い声でユキヒコが応じる。
「心残りを無くす。
全部片付くわけじゃないけど」
そう言って集まってもらった者達を見渡す。
「それじゃ、行くぞ」
「おう!」
グゴガ・ル、邪神官、イビルエルフ、ソウスケは力強く返事をした。
四人をつれて転移をする。
その先にあるのは、長く帰ってなかった場所。
この世界でユキヒコが生まれた場所。
全ての発端となった地。
ごく普通の、そこらにあるような、どこにでもある農村。
ユキヒコとユカが生まれて育った村。
そこに向けてユキヒコ達は瞬時に移動をした。




