348回 久しぶりに見る顔、それらと共に次の目的、そして前準備へ
「さてと」
ここ何ヶ月か滞在してる県都の住居。
そこに戻ってきたユキヒコは、テレパシーで連絡をとる。
相手は顔なじみの者達。
「よう、元気か」
作戦の指示や伝達、相互の連絡を取るために、割と頻繁に呼びかけている。
なので久しぶりというほど間があいてるわけではない。
彼らもまた作戦についての連絡なのかと思ってる。
そんな彼らに、
「今日はいつもと違う」
前もってそう伝える。
「世話になってるから、みんなを誘おうと思ってね」
そこからの話に、もちかけられた者達は驚いた。
ありがたい話ではあるのだが、何分にも急な事で対応をどうしようかと考えてしまう。
だが、決して悪い申し出ではない。
可能ならば頷きたいものだった。
問題なのは、それだけの時間があるかどうかだった。
「時間がかかるなら、見合わせるしかないが」
「こっちも忙しいから」
「少しくらいなら席を外しても大丈夫だが」
そんな声が帰ってくる。
「大丈夫。
長くても一日。
それ以上はかからないから」
そういう事で皆も納得する。
それなら、といって受諾していく。
「それで、いつになるんだ?」
「いつでも。
なんなら今からでも」
ユキヒコの返答に、皆は驚いた。
さすがにすぐに実行とはならなかった。
全員、都合を合わせ、仕事を他の者に割り振る必要があったからだ。
全員がそれなりの立場にいるので、そうそう簡単に抜け出すわけにはいかない。
事前にある程度の調整が必要になる。
だが、それが出来るならば特に問題も無く予定を組み替えていく。
立場上、外せない事もあるが、たいていの事は融通がきく。
それに一日いないくらいで仕事が滞るような体制ではない。
そういった組織を作ってきた。
なので、調整が終われば時間をとる事が出来る。
それが終わって全員が集まれる日が決まる。
その日になってからユキヒコは、連絡をとった者達を集めて回った。
転移を使い、一人一人の所に顔をだす。
「よう」
「おう」
軽く声を交わして、そこから再び転移していく。
そうして数カ所ほど回って全員が集まる。
「直接顔をあわせるのは久しぶりだな」
「そうだな」
「もう半年、いやそれ以上になるか?」
「領地運営で動けなかったからな」
「こっちは前線を動き回ってたし」
「俺は敵の方にいるし」
そう言って全員笑う。
「いや、みんな出世したもんだ」
「まったく」
そう言ってグゴガ・ルとソウスケ、そして邪神官にイビルエルフが笑う。
彼らは実際出世している。
グゴガ・ルとソウスケは言うに及ばず。
邪神官とイビルエルフも領地運営をする立場だ。
その為に昼夜分かたず奔走している。
最近はいくらか落ち着いて、時間と気持ちに余裕が出てきたようである。
そこを見計らってというわけではないが、今回の話を持ちかけた。




