338回 敵もそれなりの対応策を考えていく 3
異種族連合もそれを黙って見ていたわけではない。
敵が結集していく前に、潰せるところは潰していく。
壊滅させられなくても、少しでも人数を減らすために攻撃を仕掛けていく。
集まって巨大化していく敵にあわせて、異種族連合も結集していく。
一撃離脱の遊撃戦を仕掛けながら少しずつ敵を削っていく。
そうしてほんの少しでも敵を減らし、今後につなげようとしていく。
それでも敵は相当な数が撤退を成功させる。
縮小した分だけ敵は密集し、防衛力を増大させた。
そうなるとさすがに簡単に手は出せない。
やむなく異種族連合は攻撃を控える事になる。
だが、それはそれで問題はなかった。
撤退撤収に伴って放棄された地域も大きくなる。
そこには持ち出しきれなかった食料や物資が残っている。
それらを回収する事で、いくらか備蓄を作る事が出来た。
今少し活動時間を延ばす事が出来る。
そしてイエル側の軍勢は正面から来る敵に向かっていく。
迫る7万の敵を前に、予備陣地にて迎え撃つ。
その数、4万。
数では劣るが、陣地を用いる事で劣勢を補っていく。
そんな所に不用意に仕掛ける事もなく、異種族連合は予備陣地の前に陣取った。
そのまま双方のにらみ合いが続いていく。
敵の前に陣取る事になった元遊撃隊長には、後方からの指示が届いていた。
『敵陣の前の布陣し、時間を稼げ。
こちらから仕掛けて損害を出すことのないように。
長期戦に持ち込むこと』
それが出された指示である。
言われて元遊撃隊長もなるほどと納得する。
敵のこもってるのは、野戦築城で作られたもの。
防備そのものはしっかり建設された砦や要塞には劣る。
だが、守りを固める為に設置されたそこに攻め込めば、少なくない損害を受けるだろう。
それよりは敵の前で立ち止まり、機をうかがう方が良い。
それで敵が出てくれば儲けもの。
陣地にこもってるよりは倒しやすくなってくれる。
「すぐに陣地をこしらえろ」
腰を据えての攻略を意識して、元遊撃隊長は指示を出す。
敵の前に陣取るといっても、何もしないでいるというわけではない。
敵の襲来に備えてそれなりの防備は作っていく。
土を掘り、土嚢を造り、それを積み上げて防壁を作るくらいはしていく。
近くに森林があるならば、それを切り倒して柵を作る。
たとえ簡素なものであっても構わない。
それなりの備えがあれば、戦闘もやりやすくなる。
長期戦にもちこむためにも、敵の攻撃をしのぐものを作っていかねばならない。
その構築に彼らは時間をかける事にした。
その間に異種族連合の本隊は更に奥地に結集していく。
国境地帯の制圧にも数を割かねばならないので、全軍というわけにはいかない。
それでも6万という数が集まってくる。
相応の時間が必要だったが、その時間は状況が作ってくれた。
敵が戦線縮小の為に撤退したこと。
敵が前線に向かっていったこと。
それらが敵地侵入部隊を集結させる時間になっていった。
集まった部隊は隊列を組んで敵領の中に更に食い込んでいく。
敵に見つかる事は考えてない。
住人が避難したあとの無人地帯だ。
発見を恐れる必要は無い。
そのまま先に進み、目的地へと向かう。
先行して偵察していた者達の案内を受けながら、軍勢はこの地方と隣接する境目辺りを目指す。
侵攻した異種族連合に対して、敵は援軍を呼ぶ。
そんな事は当然想定されている。
それを阻む為に、地方の境目あたりを襲撃し、妨害を施していく。
増援を阻み、同時に敵の兵力を少しでも分散させる。
あわよくば敵兵力を削っていく。
その為の部隊展開だった。




