331回 全てはこの日この瞬間のため、そして勝利のため、何より敵を蹂躙するため 2
「こっちだ」
「おう」
手引きをする者の頭領であるソウスケが出迎える。
街道を越えてきた第一陣の武将であるグゴガ・ルが手を上げた。
「久しぶり」
「ああ、元気そうだな」
お互い、覚醒階梯の上がってる者同士という事で接点がある。
ユキヒコの手引きもあったが、そこそこ良い関係を作っている。
「第一陣はこれだけか?」
「ああ。
総勢6000、好き勝手動いていけと言われてる」
「大雑把だな」
そう言いつつもソウスケは笑う。
「どうせユキヒコの指示だろ」
「もちろん」
グゴガ・ルも頷いて笑う。
「こんな事言い出すのはあいつしかいない」
それにもちゃんと意味があるのは分かってる。
そうであってももう少しマシな指示はないのかとも思っている。
「おかげでやりやすくはあるんだがな」
「任されるこっちはたまらん」
ようは、グゴガ・ルに求められてるのは、かつてのような遊撃戦である。
以前のように自由自在に動いて敵を撃破する。
神出鬼没の行動で敵を混乱させる。
それがグゴガ・ルに求められてる事だった。
その為に自由に行動する事が求められた。
それだけの権限を与えられもした。
肩書きや階級もかなりのものを与えられている。
必要な情報や物資については言わずもがなだ。
それだけグゴガ・ルは期待されてるという事でもあった。
される方はたまったものではなかったが。
「おかげで作戦立案と部隊編成でさんざんだった」
「ごくろうさん」
そう言うしかなかった。
ソウスケも似たような状況であったから、そのつらさが痛いほどよく分かる。
「そう言ってくれるのはお前だけだ」
共に相手の苦労を知る者同士、苦笑いしあいながら慰めあう。
それでも今後についてを語っていく。
今後の活動で必要な事を。
長きにわたる準備を終えて動き出していく軍勢。
それらが配置について行動を開始していくのは、更にもう少し経ってから。
秋の実りを収穫し終えるかどうかという頃合い。
実りを倉に入れ、徴税が始まろうかという時期になる。
その年、まれに見る天候の良さで豊作を迎えていたこの地方は、戦争の問題をほんの少しだけ忘れてこの快挙を喜んでいた。
それがユキヒコによるものであるとは知る事もなく。
それが何のためであるのかも知らぬままに。




