324回 勝利に勝利を積み重ねるためにやれる事はなんでもやる、それが人道にもとるものであろうと知った事ではない 3
伝令・飛脚のゴブリンがそれを受け取り、走り出していく。
司令部には翌日には届いてるだろう。
それからあらためて次の指示が来るのは、早くても三日四日ほど後だろうか。
ソウスケの現状を把握して、今後の事を考えていかねばならないから、最低でもそれくらいの時間は必要だろう。
ただ、いくら手広く広がってるとはいえ、ソウスケがかかえる行商人は限られている。
もし本気で輸送を考えるならば、今以上の馬車や人手が必要になる。
それを提供してもらわないとどうしようもない。
ソウスケの方で、事業拡張を理由に人などを集めるにしてもだ。
ただ、秘密の保護を考えるとイエル側の人間は使えない。
どうしても異種族連合側で用意してもらわねばならなかった。
それは異種族連合の方も考えていた。
なので、ソウスケには現地の案内。
先導役を頼むつもりでいた。
敵の検問や見張り、巡回などに対処する事も含めて。
その上で、率いてもらう馬車にしろ御者にしろ、それらは異種族連合の方で用意する事にはなっていた。
ただ、それにしても多少の訓練や教育も必要になる。
ソウスケにはそれらも頼むつもりでいた。
その為に、何ヶ月も前に作業を開始していくのだ。
訓練や教育には時間がかかる。
それらに一ヶ月か二ヶ月は費やす事になるだろう。
それから実際に軍勢を内部に侵入させていく。
それも一度に大量の輸送は出来ないだろうから、何回かに小分けにして行う事になる。
何ヶ月も先の事とはいえ、それらを考えると準備期間は十分といえるかどうか。
それでも始めなければ何も完成しない。
遅れも発生し手直しも必要になるだろう。
それでも実行する事は変わらない。
それはソウスケも承知している。
すぐに実現に必要なものを考えていく。
とにかく案内役は必須として、その育成。
やってくる者達におさえておいて欲しい常識など。
それらを割り出し、書き出していく。
とにかく時間がない。
促成栽培にならざるをえないだろう。
となれば、簡単におぼえられて、なおかつ必要な事だけを絞っていかねばならない。
期日までの時間を考えると、それしか出来ない。
それ以上を求めるわけにもいかない。
それでも求める水準に到達するわけではない。
最低限おぼえてもらうにしても、やってもらいたい事はそれだけではないのだから。
しかし、やってもらいたい事を全部やらせて上手くいくというわけでもない。
それが出来る者もいるだろうが、そんなのは才能のあるごく一部だけ。
大半の人間は凡愚な凡俗だ。
それを短期間で一定の水準まで引き上げようというのが間違っている。




