323回 勝利に勝利を積み重ねるためにやれる事はなんでもやる、それが人道にもとるものであろうと知った事ではない 2
大量に発生した難民。
それらを使ってソウスケは、様々な工作を行っていた。
表向きは、そういった者達に仕事と食い扶持を与える為に。
その裏では、本来の目的を果たすために。
培った商売の販路と行商路などを駆使して人を動かしていった。
様々な混乱を発生させる為に。
難民の中で特に切羽詰まってる者達。
そういった者達を密かに抱えたソウスケは、それらを引き連れて町や村へと出向く。
それらを襲わせる為に。
行商人に扮装して接近して襲いかかるそれらは、イエル側の領域にそれなりの傷跡を残していった。
また、それを含めて様々な問題や罪を犯した者も確保していった。
そういった者達は、密かに開通させた通路を通して後方に。
そこから敵との緩衝地帯へと送り込んでいく。
異種族連合側が確保した地域で、敵の前線との間にある場所だ。
そこに放り込んでその場にいる連中と合流させていく。
そうして使える手駒の安全を確保していく。
こうして問題を起こす連中を抱える事で、使える兵隊を増やしていく。
それらは盗賊や山賊としてイエル側の者達を襲わせたりしていく。
また、来たるべき戦いに備えて、兵力としていく。
もちろん正規の軍勢として抱えるつもりはない。
だが、使い潰しの捨て駒としては十分に使える。
ソウスケの仕事には、そうした連中の確保も含まれるようになっていた。
そんなソウスケであるが、最近はもう少し敵地に踏み込んだ場所まで出向く事も多くなった。
商品の買い付けのために、どうしても大手の商売人達の所に向かわねばならないからだ。
前線地域での産物だけでは必要なものが賄えない。
なので、買い付けに出向く必要が出てきている。
それがあらたな人脈作りにもなるし、内部情報の確保にもつながっている。
何よりも、地理が分かるのがありがたかった。
それらは来たるべき侵攻における目印になっていく。
こうして外縁部と、内部の一部だけではあるが敵地の様子が分かるようになった。
異種族連合側からすれば謎だらけであった敵の内部。
その様子を伝えてくれるのは、これ以上ない手助けだった。
更にもっと内部の詳細な部分については、内部に兵力を送り込む事で把握に努めていく。
その際には、行商を行ってるソウスケの商会の馬車などが使われている。
それらに乗って内部まで入り込み、様子を掴んでいく。
今までよりもはるかに簡単に内部に入れるとあって、異種族連合は大助かりである。
「それで、今度はこれか」
内部情報の報告を渡してから受け取った指示書。
それには次の要望が書かれていた。
「兵隊の輸送か」
今まで以上に敵内部に兵隊を送り込む。
それにより、侵攻の手助けをさせる。
そういった計画が持ち上がっているという。
まだ実行期日までは何ヶ月もの時間がある。
しかし、可能な限り多くの兵力を内部に潜り込ませるために、今から実行するというのだ。「本気なんだな」
それが伝わってきた。
詳しい内容については全く書かれてない。
兵力はどれくらいつぎ込むのか、そして展開場所はどこなのか。
それらはさすがに記されてはいなかった。
それもそうだろうと思う。
もし事が露見した場合に、敵に漏洩する情報を少なくせねばならない。
その為、全ての情報を伝える事は出来ない。
それが分かるので、ソウスケはさほど文句は言わなかった。
ただ、こういう動きがあるならば、それなりの準備も必要だろうというのは分かる。
(こっちが用意出来るのは……)
輸送というなら馬車なども必要になるだろう。
歩きで移動する事もあるだろうから、案内人も必要になる。
隠れ家も作っておかねばなるまい。
食料なども確保しておく必要がある。
現在の手持ちでソウスケが用意できるものを一つ一つ書き出していく。
それらで出来る輸送の限界なども添えて。
(こんなところか)
それらをまとめて報告書として提出する。




