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318回 数はともかく質において双方問題を抱える軍勢が衝突していく 11

 正面と右手に兵を集めたために、左手の方が手薄になる。

 しかもそちら側に移動してしまっている。

 身の安全を確保しようとしての事だったが、その目論見は大きく外れていく。

 そこは軍事的な知識や経験のないタツハルの悲しいところである。

 安全を求めて危険な場所を作ってしまっていた。

 そして自らそこに飛び込んでしまっている。



 そこを突いたグゴガ・ル達は、比較的簡単に勇者へと接近する。

 というより、グゴガ・ルが単身突進していく。

 覚醒階梯が上がった事で出来るようになった能力向上。

 それにより一時的に能力を上げて敵へと向かっていく。

 効果時間が限られてるので急がねばならない。

 それでも通常の二倍三倍という力で動く事が出来る。

 そんなグゴガ・ルを止められる者などいるわけもなかった。



 後ろから追いかける元遊撃隊の者達も置いて行かれる。

 先を行くグゴガ・ルはそれほどに速い。

 だが、それでも彼らは進む。

 先に進むグゴガ・ルが作った血染めの道を目印に。

 そうやって進む事で、グゴガ・ルに向かう敵を引きつける事が出来るのだから。



 勇者に迫るグゴガ・ルは、間の敵を切り伏せながら進んでいく。

 その目には、敵とその先にいる勇者がうつる。

 そして、それ以外の光景も。

 周囲に渦巻く気の流れ。

 それもとらえていた。

 だからこそ分かる、勇者が誰なのかが。

 一人だけ、他とは違う気を持つ者がいる。

 幾分大きく濃い気の塊が。

 そいつを中心にして周囲に拡散される気の流れが。

(あれが……)

 なんとなく察する。

 それが軍勢を動かすためのものだと。

 他の者達とつながり、意のままにしているものだと。

 それを断ち切るために、根本を潰すためにグゴガ・ルは進んでいく。



 本当に一瞬の事だった。

 迫るグゴガ・ルに向けて、タツハルは兵士を前に押し出す。

 それを盾にするつもりなのだろう。

 魔女/女神イエルによって体を回復させた者達だから、他の連中よりは使えるはずだとふんで。

 しかし、結果は大きく裏切られた。

 それなりの鎧に身を包んだ兵士であったが、グゴガ・ルはそれを簡単に切断した。

 体を鎧ごと分断し、二つになった死体が転がっていく。

 能力を向上させたグゴガ・ルにとって、武装した兵士など案山子にもならない。

 タツハルも剣を抜いてどうにかしようとするが、それもむなしい抵抗だった。

 そもそも抵抗にもなってない。

 体は元に戻ったとしても、それ以外に大きな変化があったわけではない。

「ひいっ!」

 悲鳴をあげ、剣をふりまわす。

 その剣が振り上げられ、グゴガ・ルの剣を遮るような形になる。

 たまたま偶然そうなった。

 しかし、それがグゴガ・ルの剣をはじき返すわけもない。

 振り上げた剣を切り落とすゴグガ・ルは、遮った剣ごとタツハルを切断した。

「──── !」

 悲鳴を上げる事もなくタツハルは、頭から股間まで切りさかれる。

 そのまま兜と鎧も含めて左右に分断され、二つに分かれながら倒れていった。



 その瞬間、敵の動きが止まった。

 勇者が倒れた瞬間に棒立ちになった。

 その場で立ち尽くす勇者の軍勢だった者達は、そのまま地面にへたり込む。

「なんだ?」

「どうした?」

 異種族連合の者達からそんな声が上がっていく。

 その中でグゴガ・ルだけは理由を察していった。

「切れたな」

 勇者からの気の流れがだ。

 勇者を倒した瞬間に、他の兵士達とのつながりが消えた。

 それが原因なのだろう。

 敵が動かなくなったのは。

 敵は今、その場に倒れ込み荒い息を吐いている。

 おそらく戦い詰めで疲れてるのだろう。

 そんな疲労など今までは見せなかったのだが。

 それもまた勇者に操作されていたのかもしれない。

 ほとんどの者達はへたり込んだまま動けなくなっていく。



「神官はいるか?」

 そんな中でグゴガ・ルは声をあげる。

 応えて神官が近づいてくる。

「何か?」

「出来るなら、こいつらの魂を我らの神々へ」

 そう言って切断した勇者を指す。

「まだ魂が残ってればだが」

「ああ…………分かりました」

 言われて神官はすぐに祈りを唱え始める。

 神に供物を捧げる為に。

「神よ────」

 祈り始めた神官は、足下に転がる死体にまだ残っていた霊魂を束縛する。

 それは彼らの神々へと捧げられ、その全てを吸収されて消滅していく。



 それだけではなくグゴガ・ルは、

「転がってる連中も集めろ。

 残さず神々に捧げるんだ」

 倒れて動けなくなった敵を集めさせていく。

 それらが神官の前に放り出され、その都度生け贄として捧げられていく。

 それは戦闘が終わった他の場所でも同じように行われていった。



 異種族連合は最終的に1万8100の生存者を残した。

 4万を超える敵を相手に、これだけの人数を残して勝利した。

 圧勝と言ってもよいだろう。

 もちろん、相手が万全の状態ではなかったというのはある。

 勇者も特段優れた奇跡を使ってるわけではない。

 それらを考えると、額面通りに喜ぶわけにもいかない。

 しかし、それでも死傷者をおさえてこれだけの結果が出ている。

 異種族連合はその結果を、まずは素直に受け取る事にしていった。

 詳細な分析などは後でやるとして。

 何はともあれ、目の前の敵を倒した事に変わりは無い。

 危機は消滅したのだ。

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