313回 数はともかく質において双方問題を抱える軍勢が衝突していく 6
勇者の軍勢は堀を越えて更に進んでくる。
そんな敵に異種族連合は遠距離攻撃を仕掛けていく。
第一陣を越えてきた敵の一部が倒れていく。
それでも敵全体の勢いを止める事は出来ない。
衰えを見せない敵の動きに、異種族連合側も多少の恐怖を感じていく。
それでも考えなしの突進である。
損害そのものは敵の方が大きい。
また、防備の陰に隠れる事が出来る異種族連合の損失は少ない。
ここでも大きな差がついていく。
時間が経つごとに第二陣も危うくなっていく。
それを見て異種族連合は第三陣への撤退を決断していった。
第三陣まで撤退していく異種族連合。
そんな敵を追いかけるように勇者の軍勢も進んでいく。
陣地を再び越えて、その列は長く広がっていく。
それは地面を埋め尽くすかのようであった。
だが、どうじにそれは隊列が伸びていく事もあらわしていく。
密集していた軍勢が散り散りになってるようなものだ。
軍勢という塊が分裂するほどではないのだが、それぞれの間隔はひらいていく。
第一陣から第二陣へと進むことで、その開きは大きくなっていく。
そこに異種族連合側の軍勢が突き進んでいく。
それは横からの一撃だった。
戦線の端っこから飛び出した一群が伸びきった敵軍に突進していく。
前にだけ進んでいる敵勢は、それに即座に対応できない。
鬼人を先頭にしたその部隊は、隙間の空いた敵勢の横腹を食いちぎるように進んでいった。
進む軍勢は鬼人を先頭にして、その後ろに人やイビルエルフ、獣人などがついていく。
また、そのまわりを更にゴブリンがとりかこむ。
こうして形成された一群は、横から突き進み、そのまま敵の中を横切っていく。
横切りながらイビルエルフが魔術を放つ。
攻撃的な威力のあるものではない。
眠りを誘ったり、体の倦怠感を起こさせて動きを鈍らせるような、比較的簡単な魔術だ。
直接的な威力はないが、消費が少なく、広範囲に影響を及ぼしていくものである。
それを魔術の素養の高いイビルエルフが使っていく。
当然ながら、効果範囲を拡大させて。
それに巻き込まれた敵勢は、次々に動きを鈍らせていく。
おかげでそこかしこで転倒する者が発生する。
そして、後からやってくる者達に踏み潰されていく。
間隔が開いたといっても、そこは大軍だ。
意識を失って倒れ続けていれば、そのうち誰かが踏みにじっていく。
その魔術を切り抜けた者達も、横切っていく軍勢に近づけば切り倒されていく。
人や獣人達の持つ弓や槍で。
投石具で石を投げるゴブリンもそこに加わる。
そうして総勢1000人ほどの一群は、敵を前後に分断していく。
その隙間に第二の一群が入っていく。
最初の部隊が作った隙間を通るように進む彼らは、そのまま先に進んだ部隊に合流。
それから背後を見せている敵に殺到していく。
防衛陣地に向かっていた勇者の軍勢は、背後から襲われる事になる。
挟み撃ちに形になった彼らは、呆気ないほど簡単に壊滅していく。
それから第二部隊は味方の陣地にそのまま帰還。
先に突入した部隊もそれに続く形で帰還する。
こうして敵は一気に数百人以上の損害を出していく。




