309回 数はともかく質において双方問題を抱える軍勢が衝突していく 2
そんな両者の戦闘は、クロスボウによる遠距離攻撃から始まっていった。
ただし、それは敵との距離が詰まってからになる。
互いの距離が30メートルを切り、更に接近してからようやく矢が放たれる。
そこまで接近してからの攻撃なのは、命中率の問題だった。
狙いのつけやすいクロスボウでも、遠距離では当たらない。
まして扱ってるのはゴブリンである。
相当近くまで迫らないと命中は期待出来ない。
それを考えて、遠く離れてる段階での射撃は控える事になっていた。
また、勇者側の兵隊が盾を構えてるのも理由である。
盾を構えてる敵に撃っても、盾に遮られるだけである。
そうなるくらいならば、少しでも近づいて、盾で構えられてない所を狙った方がマシだ。
そういう所に当てるのも難しいのは確かだが、少しくらいは有効な攻撃を狙う事が出来る。
その為、可能な限り引きつける必要があった。
ただし、接近してからの攻撃は早い。
装填を別の者に任せる事で可能とした連続射撃が火を噴いていく。
次々に繰り出される攻撃に、勇者側の兵隊は次々に倒れていく。
致命傷は避ける事が出来たが、盾からはみ出た頭や腰にあたって倒れていく者が出てくる。
その為、勇者側の兵隊は異種族連合と接触する前に脱落者を出していく。
それでも勇者側の兵隊は歩みを止めない。
普通、隣に居る者が倒れていったら、多少は怯むものだ。
しかし勇者の兵隊達はそんな事気にする事もなく進んでいく。
それも勇者が使った奇跡によるものだ。
恐怖を消し去る奇跡のおかげで、何があろうと怯む事は無い。
ただひたすらに前進し、異種族連合の最前列にいる者達に近づいていく。
進軍する勇者の兵隊達。
そんな彼らは、張り巡らされた堀へと殺到する。
横に長く掘られたそれは、迂回する事も出来ないほどに長い。
なので勇者の軍勢はそのまま進んでいくしかない。
幸いにも深さはさほどではない。
せいぜい1メートルくらいの浅いものだ。
比較的簡単に侵入する事が出来る。
それでも体が思うように動かない勇者の兵隊達は、そこかしこで転んでいってしまう。
大した怪我を負わないのがせめてもの救いだろう。
体は痛むが動けないほどではない。
起きあがって前へと進む。
ただし、そこから先は簡単にはいかない。




