306回 遊撃隊、突撃する 4
グゴガ・ルのとった基本的な方針は『嫌がらせ』である。
大きな敵に少人数で出来ることは限られている。
損失を与えるなど夢物語でしかない。
だから、可能な限り相手の調子を狂わせる事に終始した。
時に戦果をあげる事もあったが、それはあくまでおまけだ。
本来求めたところではない。
夜襲などではかなりの結果を出せたが、それも運が良かっただけと考えてる。
また、敵の意表を突くために撤退では無く敵中突破を選んだ事もある。
これらはたまたま上手くいったが、これが最善と考えてるわけではない。
むしろ、そういう手段しかとれなかった事を悔いている。
成功したから良かったものの、下手したら壊滅していた。
そんな危険をおかさねばならなかった事をグゴガ・ルは悔やんだ。
実際、それなりの損失も出している。
完全な無傷というのはさすがに無理だとは分かってるが、これは出来るだけ避けたい事態だった。
それでも400人中350人以上が無事に帰還。
戦果を考えれば小さな犠牲と判断するに十分である。
それを成し遂げたグゴガ・ル達は、見事な凱旋を果たす事が出来た。
一方、もう一つの遊撃隊は悲惨なものである。
数を半分の200まで減らし、それでいてあげた戦果は少ない。
手柄が全くないというわけではないが、失った兵力に見合ったものではない。
それでいて敵に与えた影響も少ない。
グゴガ・ルという比較対象があるから、余計に評価が低くなる。
そんな彼らはなんとか成果をあげようと余計に無理を重ねる。
そして損失を拡大していく。
さすがに多少は反省したのか、夜襲なども織り込むようにはなった。
それでもグゴガ・ル達ほどの戦果をあげる事も出来ない。
勇者側の警戒があがった事もあり、思ったほどの成果がでなくなっていた。
最終的に彼らは、人数を100を割り込むまでに減らすことになる。
そんなもう一つの遊撃隊は、それでも狙える瞬間を求めて敵にはりついていく。
食料などの補給は受けていたが、帰還することもなく。
彼らからすれば、ろくな成果もあげられぬままに帰ることは出来なかった。
邪神官達上層部も、彼らに帰還を促すような事はしなかった。
特に考えがあるわけではない。
居ても居なくてもかまわない、どうでもいい存在だと見限っていたからだ。
前哨戦がそんな調子で終わり、異種族連合とイエル側の軍勢がぶつかろうとしている。
異種族連合、2万。
イエル側勇者の軍勢、4万5000。
数の上ではそれでも不利な異種族連合だが、迫る敵から逃げようとはしない。
全員持ち場にこもり、敵の襲来を待つ。
勇者側も今更引き返す事は無い。
兵力は減ったし、体調も万全では無い。
それでも彼らは進む。
勇者に率いられてるから、女神と信じるイエルに従ってるから。
何より、向かう先に敵がいる。
彼らをここまで貶めた連中が。
引き返す理由などない。




