304回 遊撃隊、突撃する 2
そんな鬼人らの背後から、獣人達が飛び出していく。
彼らは鬼人が開いた道を更にひろげていく。
左右から迫る敵の中に飛び込み、傷口をひろげていく。
乱戦、混戦を引き起こし、敵を引っかき回していく。
組織だった動きを阻害するために。
それらの後押しもされていく。
獣人が飛びこむ前に、目標となる場所で破裂音が鳴り響く。
突然の事に敵は、
「わ!」
「な!」
と驚いていく。
そこに獣人は飛び込んでいく。
その音を立ててるのもゴブリンの即席魔術師達だった。
彼らは破裂音をたてる事で敵を混乱させていく。
光、水、火、土などと違い、さして狙いをつけずに済むのが利点だ。
おかげで、ある程度密集してる所に打ち込めば、そこそこの成果を上げてくれる。
光などと違って確実な効果は期待出来ないが、使い方次第でそれなりの効果をあげてくれている。
そして、それで十分だった。
少しでも敵が怯めばいい、意識が別のところに散ればいい。
ようは、脅かすために「わっ!」と叫ぶのと同じようなものだ。
それだけで集中が散る。
たったそれだけの効果しかないが、獣人が飛び込びこむ瞬間を作るには十分だ。
後には蹂躙された敵兵だけが残る事になる、
それらの傍らで、ゴブリン達も武器をふるっていく。
敵に向かっていく事への恐怖はある。
だが、突進による勢いと、すぐ隣に鬼人がいるという安心感。
それがゴブリン達の中の怖さを打ち消していく。
小心者のゴブリンだが、それなりの状況を揃える事が出来れば、それなりに働く。
彼ら自身、比較的まともなゴブリンであるのも確かだが、それだけではやはりまともに動く事は出来ない。
今回、怯えてふるえる要素を可能な限り減らした事で、そこそこの活躍をしていた。
そうして活躍することで敵を倒していく。
それがまた勇猛果敢さを生み出していく。
鬼人や獣人、それにイビルエルフに人間。
それらの中でゴブリン達は、彼ら足りないところを埋める戦力として確かな働きをしていった。
敵を倒して進んでいく。
そうして敵の隊列を分断していく。
一丸となって進む遊撃隊は、数において圧倒的に上回る敵を退けていく。
そして敵を突っ切って抜け出すと、そのまま敵から離れていく。
ここで足の速い獣人らは隊列から抜けて先へと向かっていく。
そして、ある程度先に進んだところから、短弓を使っての援護射撃を開始していく。
それが足の遅い鬼人やゴブリンの逃げ出す隙を作っていく。
その後に、イビルエルフも続く。
彼らも少し先に進んでから援護をはじめる。
彼らが得意とする魔術を使って。
といっても攻撃魔術をつかうわけではない。
もっと単純で簡単で、消耗の少ないものを用いる。
ようは、逃げ出す時間を稼げればいいのだ。
敵を倒す必要は無い。
出来たらそうしたいが、それは優先するべき事ではない。
彼らは背後から迫る敵に向けて、広範囲に魔術を使っていく。
味方と敵の間を遮るように。
広範囲に暗闇を発生させていく。
何にしても相手の姿が見えないとどうしようもない。
周りに何があるのか見えないと動きようがない。
その為、単なる暗闇でも行動を大きく阻害する事になる。
何せ、それに遮られてその向こうが見えないのだから。
これが以外と厄介である。




