297回 遊撃隊、初動はまず成功
その片割れ。
グゴガ・ルが率いる事になった遊撃隊は、与えられた仕事をこなそうとしていた。
夜、敵に接近し、少しずつ数を削っていく。
音を立てず、姿を隠して。
それが大軍を相手にしたゴブリンが出来る戦法だった。
正面からぶつかるわけにはいかない。
そんな事をすれば粉砕される。
出来るだけ損害を出さずに戦果を出すにはこれしかなかった。
そのグゴガ・ルは手勢を率いて敵に接近してるところだった。
音を立てずに接近し、姿を見られないよう工夫する。
その為、進みは遅い。
地面に伏せたまま少しずつ先へと向かう。
だが、どれだけ時間がかかろうとも、今は気取られるわけにはいかなかった。
時に風で音を消しながら。
時に暗闇を生み出して姿を隠しながら。
そうしながら敵の野営地へと向かう。
見張りもいるが、それらもゴブリン達には気づかない。
周囲の草の丈が高く、かがんだゴブリンを見つけにくいのだ。
それに、見張りもそれほど万全な状態ではない。
だいたいにして体を損壊された者なのだ。
どうしたって隙が生じる。
そんな彼らを責めるのも酷というものだろう。
見張りが敵を発見できなかった事は痛恨事だが。
そんな敵の失態につけ込んでいく。
接近したゴブリン達は見張りの死角から接近。
忍びより。口を塞いで急所を突いていく。
一瞬にして絶命した見張りは、自分に何が起こったのか理解する事も出来なかった。
それが終わるとゴブリン達は並んでるテントにとりついていく。
静かに中に入り、眠ってる者達を始末していく。
疲れて横になっていた者達は、迫る脅威に気づく事なく事切れていった。
これがあちこちのテントで行われていった。
勇者の軍勢はこうして戦わずに数を減らしていく。
200人のゴブリンによる夜襲。
それは音もなく静かに実行されていく。
次々に倒されていく兵士達。
これにより勇者軍は一夜にして2000の兵を失う事になった。
それに対してゴブリン達は一人の犠牲も出ていない。
誰も脱落することなく撤退していく。
今後の事を考えて武器などは回収して。
それらは今後ゴブリン達が有効活用するつもりだった。
予備は多ければ多いほど良い。




