295回 その場に集う軍勢の様相と、それぞれの思惑 2
「面倒だな」
同じような感想は、離れた所から監視しているユキヒコも抱いていた。
遠視、読心といった能力でその軍勢を解析していく。
「死兵って奴か」
生きる事を捨てた者達。
死を恐れない、受け入れてる、あるいは諦めた者達。
だからこそ、死ぬ事を何とも思わない。
生きる事を厭う者達。
そんな連中である。
こうなると一人一人の強さなど関係がない。
恐れる事無く突っ込んでくるから面倒だった。
なので、撤退というものがない。
全滅するまで襲いかかってくる。
言い換えれば、全滅させるまで戦闘は終わらない。
これが通常の軍隊ならば話は違う。
決戦などならともかく、通常は全滅するまで戦う事は無い。
そうなる前に、どちらかが撤退を始めていく。
その為、可能な限り軍勢を散らしてしまえば良い。
そうなれば、全滅する前に指揮官が撤退を命令する。
命令がなくても、兵隊が逃げ出しはじめる。
しかし、目にした軍勢にはそれが通用しない。
生きる事に失望した者達だ。
死ぬ事を何とも思いはしない。
だから損害をどれ程与えても撤退はない。
本当に死ぬまで戦い続ける。
そんなの相手にするのはとんでもない労力が必要になる。
「さて、どうするか」
こいつらをどうするか考えていく。
壊滅させるのは簡単だ。
ユキヒコが能力を使えばそれで終わる。
軍勢の足下に亀裂を発生させて、そこに埋めてしまえばそれでおしまいだ。
他にも様々な方法で一気に壊滅させる事が出来る。
だが、それは出来るだけ避けたいところだった。
「せっかくの練習台だし」
面倒な相手だが、貴重な実戦経験をつませる好機でもある。
なので、出来るだけ異種族連合に仕事をさせたかった。
まずくなったら助けるにしても。
「出来るだけ頑張ってくれよ」
可能な限りの手助けはするつもりである。
しかし、それでも自分達の手で勝利を掴んでもらいたかった。
今後も続く戦争の事を考えて。
章の終わりに。
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