290回 同じ部隊であっても、体験や経験を共有してるわけではない 2
会議が終わり、自分の部隊へと戻っていく。
そこは、ゴブリン達の中心ともなってる場所だった。
戻ったグゴガ・ルは、すぐに伝令を飛ばす。
警戒にあたってる者達に。
そして、後方に居るユキヒコ宛に。
配下に入ってるゴブリン達には今後の指示を。
後方に居るユキヒコには、現状と今後の動きについて。
それを出してグゴガ・ルは、周りにいるゴブリン達に指示を出していく。
「行くぞ」
それはゴブリン部隊の全員に伝えられていった。
そして、静かに動き出していく。
設置された天幕などはそのままに。
動きを感取られないようにわざと放置していく事にした。
持って行く物も最小限に。
さすがに武具は置いていけなかったが、出来るだけ身軽な状態で動き出す。
一時間もしないうちに、ゴブリン達は遊撃隊の本部から消えていった。
ゴブリンだけではない。
それ以外にも何人かが彼らと共に行動している。
「いいのか?」
同行してくる者達に、グゴガ・ルは何度目かの問いかけをする。
事情が事情だからグゴガ・ルは独自に動き出した。
また、同族のよしみもあって配下のゴブリンも動かした。
しかし、同行した者達はそうではない。
「かまわん」
それでも、一緒にやってきた者の一人は即答する。
「あのままじゃ俺たちも危ない」
そう答えるのは獣人の兵士だ。
ユキヒコと共に行動し、ゴグガ・ルとも面識がある。
それだけに、今回の行動では一も二も無くついてきた。
「そうそう」
一緒にやってきた別の者も同調する。
「なんたって命が一番」
「わざわざ負ける戦をする必要もないからな」
お調子者っぽい言い草をするイビルエルフ。
それに続いて、太めの声を発する鬼人が続く。
「命あっての物種。
神様だってそう言ってるし」
最後に人間族の男が続く。
「俺たち、死にに来てるわけじゃない。
戦うしかないけど、それも生き残るためだ。
無理して死ぬ必要は無い」
「そうそう」
誰もがそんな考えだった。
だからといって、何もしないで逃げ回るつもりではない。
「成果だけ上げればいいんだ」
「無理しないでな」
「出来るだけ楽をしよう」
そんな考えでいる。
仕事へのやる気はしっかりと持っている。
そこに、
「徹底的に手を抜かないと」
という考えがあるだけだ。
いかにして手を抜くか。
どれだけ労力を減らせるか。
どのようにして損失をなくすか。
とことんまで無駄を省くにはどうするか。
そういった考えでものを言っている。
「命だけは大事にしないとな」
これがこれらの根底にある。
死を覚悟せねばならないのは分かってる。
だからといって、常に命の危険がある事をやってるわけにはいかない。
その危険を徹底して潰していく。
それでいて成果があがる方法を探っていく。
その為ならば、グゴガ・ルと行動を共にしてる連中はあらゆる努力を惜しまない。
「絶対に生き残るぞ」
「おう!」
気合いが入っていく。




