287回 こちらとあちらの部隊展開とそれにまつわるあれこれ 4
しかし、数が数である。
5万となるとおいそれと襲いかかるわけにもいかない。
下手に攻撃をしかければ、確実に返り討ちにあう。
一丸となってるからこそ簡単に見つける事は出来た。
そして、ひとまとまりになってるから簡単に攻撃できなかった。
ある程度分散してくれてれば良かったのだが。
そういう器用な動きが出来ないほど、一人一人の状態がよろしくない。
だからこそ、下手に攻め込めないほどの大軍になっていた。
「とはいえ、このままというわけにもいかないだろう」
遊撃隊を預かる者は状況を憂慮する。
「何もしないでいるなら、我々がここにいる意味が無くなる。
わざわざ遊撃を任されたのだ。
それなりの事はしなければ」
「だが、どうやって」
敵の数と現有兵力の差に二の足を踏む。
やらねばならない事は分かっていても、やりようがない。
敵の軍勢に、この数でどうするのか?
主立った者達はやらねばならない事の難しさに頭を抱える。
そんな中でグゴガ・ルが口を開く。
「そこまで難しく考える必要もないだろう」
「なに?」
「我々の仕事は敵を倒す事ではない。
出来ればそうしたいが、それだけが求められてるわけではない。
そうではないのか?」
その通りである。
遊撃隊に求められてるのは、遊撃である。
情報を集め、時に敵に襲撃を行い損害を与える。
また、攪乱も求められる仕事の一つだ。
「ならば、敵を倒す事は考えなくてもいい。
やるにしても、後回しにすればいい。
それが主な目的ではないはずだ」
それはグゴガ・ルの確信である。
ゴブリンとしてユキヒコと共に行動してきた経験が言わせている。
ユキヒコは勝利を求めてはいなかった。
誤解のある言い方になるが、戦闘で勝つ事を求めてなかった。
もっと言えば、戦闘は極力回避しようとしていた。
それは損失を恐れていたからである。
何より、ゴブリンではまともな戦力にならないからだ。
その為、直接戦う事は避けた。
それ以外の部分で勝つ事を目指した。
敵との会戦は望まなかった。
忍びより、潜入していく事を求めた。
奇襲になるよう常に考えていた。
敵を罠にはめるように努力していた。
何よりも先に敵を見つけ、気づかれる前に攻撃をしかけて倒す事を求めていた。
その姿勢や考え方はグゴガ・ルにもしみこんでいる。
最も近くで見ていたから、それは血肉となっている。
根本的な考え方になってると言ってもよい。
そんなグゴガ・ルだからこそ、この遊撃隊がとるべき戦法を思いついた。




