286回 こちらとあちらの部隊展開とそれにまつわるあれこれ 3
その逆に異種族連合からすれば面倒な連中である。
戦えば勝つだろうが、勝つにしてもそれなりの損害が出てしまう。
烏合の衆であっても5万という数は脅威だ。
ぶつかればそれなりの損失が出るだろう。
ようやく確保した2万という兵力が削がれるのは辛い。
回復に時間がかかってしまう。
単純に数だけ元に戻すならそれほど苦労は無い。
だが、訓練や教育を受けた兵員というのはおいそれと手に入らない。
再び同じ質にするまでには時間がかかる。
まして、将来は指揮官や中核を担う人材もいる。
それらが失われてしまったら、取り戻すのに数年以上の時間が必要になる。
それだけはどうしても避けたかった。
だが、そうも言ってられない状況だ。
ある程度の損失は覚悟しなければならない。
その上で、損害が最低限でおさまるようにする必要がある。
「最悪、俺が出るよ」
四の五の言ってる場合ではない。
ユキヒコも力を使ってでも敵を止めるつもりでいる。
「ただ、出来るだけ皆の頑張りに期待したい」
「そのつもりだ」
「我々だけでどうにかしないと意味がない」
邪神官とイビルエルフもそこは分かっている。
強い力に頼りきりになって、自分たちのするべき事を怠るわけにはいかない。
やれる事は自分たちの手でやりとげねばならない。
「それに、良い機会だ。
これを実戦演習と思ってやってみよう」
そう思ってやっていくしかなかった。
5万の軍勢は一丸となって進んでいく。
それを遊撃隊は簡単に発見する事が出来た。
事前に想定された通りの道を通っているからだ。
何せ負傷者ばかりである。
既にある道を通らねば移動に支障をきたしかねない。
舗装されてる、あるいは踏み固められた道を通るのは当然ではあるかもしれない。
その歩みは遅く、隊列もととのってるとは言いがたい。
それも仕方の無いことではある。
体がまともに動かず、訓練期間も短い。
そもそも訓練といってもたいした事はしていない。
兵士としての能力など求められてもいないのだ。
最低限の心構えと、武器の扱いを多少教えられただけ。
その程度である。
訓練期間自体も短いのだから仕方ないのだろう。




